13・ポケモンの世界 ページ14
『やっぱり私、本当に…。』
「ん？どうかしたの？」
なんでもない、と私は首を横に振る。
実際なんでもなくなんかないのだが、ここで目の前のこのポケモンに事実を話したところで信じてもらえるとは到底思えなかった。
あの時、最期にめーちゃんは言っていた。
私の行く世界がポケモンの世界で、私自身もポケモンになってしまうこと。
次元の全く違う場所に行くので、記憶を一部失ってしまうかもしれないこと。
大体の事は覚えているのだが、その後めーちゃんが言っていたと大事な『何か』を、そこだけすっかり忘れてしまっているようだ。
目が覚めた場所で…とか、そんな感じだったような気がする。
実際私が目を覚ましたこの場所はどうやら病院らしく、確かに私の身体には数箇所テーピングが施されている。
動くたび痛みが走るが、多少動くのに問題は無い。
「おや、目を覚ましたかね」
ガチャ、とドアが開き、おじいさんみたいなポケモンが部屋に入ってきた。ドラゴンみたいな見た目で、のそのそと私に近づいてくる。
「ふむ…元気そうだ。とりあえずこの木の実を食べなさい、栄養たっぷりだからね」
おじいさんドラゴンは青くて小さな丸い木の実を私の足元に落とす。鼻を近づけてみるとほんのり甘い香りがして、急激に食欲が刺激された。
小さくかじり口に含むと、甘酸っぱい果汁がじんわり広がった。歯触りのいいシャリシャリの食感はどこか林檎に似ている。
『とりあえず、元気になって良かった。』
「君がここまで連れてきてくれたおかげだよ。本当にありがとう。」
いいよいいよ、と照れ笑っていた彼は何故だか急に顔が青ざめた。
『僕、早く帰らなくちゃ…。』
「それならさっき、ガルーラが君の親御さんに連絡してくれたらしい。なんでも渡し忘れがあって、こっちに向かっている途中らしい。｣
お医者さんの目は白い眉毛(？)に隠れて見えないけれど、その柔和な雰囲気は嫌でも安心してしまう優しさに満ちていた。
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