12・夕焼け色 ページ13
お医者さん達の適切な手当のおかげで、元々小さかった傷口はたくさんのテーピングで隠れた。
薄汚れていた毛並みも美しく透き通るような白い毛に変わり、先程と同じポケモンだとはとても思えなかった。
「…うん。何が原因なのか分からないけれど、命に関わるものじゃ無さそうだし心配いらないさ」
良かった…ほっと胸を撫で下ろし、痛む腰をぐいーっと伸ばした。
すっかり忘れていたお使いの事を思い出しその事を話すと、代わりに行ってあげるからこの子の傍にいてあげて、と荷物を受け取ってくれた。
『…凄く、綺麗な子。』
お医者さんがいなくなった後、口をついて出たのは紛れもなく本心だった。
透き通る白い毛はサラサラで、端正な顔立ちは眠る顔だけでも充分に可愛らしい。美しいという形容は不似合いだ。
体格を見るに幼いし、自分とあまり歳は離れていないように思う。
あの場所にいつ現れたのか。
何故あんなに傷だらけだったのか。
考えてみればみるほど、謎は一向に深まるばかりだった。
それにしても、このままこの子が目が覚めるまで待つとなると、家に帰りつくのは何時くらいになるだろうか。
早めに帰ってくるよう言われているものの、既に太陽は西に傾き始めていた。
『…っ。ここ、どこ？』
「あ！」
ゆっくりと開かれたその瞳に、僕は一瞬で目を奪われた。
思わず息を呑んでしまうほどに濃く美しい赤。それは沈んでしまう直前の夕焼けの色によく似ていた。
『あの、君さっき森で倒れてたんだけど…その時のこと覚えてる？』
その子は自身の身体をやけに神経質になってあちこち見ていたが、やがて首を左右に振った。サラサラの横髪が動きに合わせて揺れる。
「全然、覚えてない。」
『そっかぁ。でも、気が付いて良かったよ！』
「森で倒れてた…って事は君がここまで連れてきてくれたの？」
「うん。ちょうどこの街にも用があって来ていたから、病院あるかなって思って。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
