34/親愛でもあり恋愛でもある。 ページ34
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「だから、岸に釣り上げるまでは絶対に死なせねェ」
激流の中で坂田Aは誓った。
桂の着物の帯を食い込むくらいに掴みもう一度奥歯を噛み締め、もう一度不細工な顔で踏ん張る。
ボウリングの球を足元から一気に真上へ投げやるような要領で、桂の身体を水から離そうと最大限の力を発揮した。
右腕の骨がピキッと軋んだ気がしたがそんな事には構わず。
「でりゃァァァ」
桂を、激流の無い岸へ放り投げた。
「がはっ」
呻きつつも無事岸に打ち上げられた桂の姿を確認すると、フっと力が抜けたように瞼を半分まで下ろした。
柄を握る手が段々とふやけてゆく。
充分だ。よくやったよ、私。
「まだですよ」
「……！」
目を閉じかけたAの右手を、今度は松陽が掴んだ。
岸から身を乗り出し落ちるか落ちないかギリギリの松陽の腰を支える高杉もそこにいた。
「よく頑張りました。A」
微笑みながらAの身体を水から引き上げた。
弱っても尚、松陽から譲り受けた刀を握っていたAは岸に上がるとようやく柄から手を離した。
カランっと石の上に転がる鉄の塊。
「ケホッゲホ、……はは」
桂の隣に寝転んだAは、自分達の顔を穴があくほど見つめる二人に少し笑った。
「お前、何笑ってんだ！ あと少しで死んでたかも知れねェんだぞ！」
「だって、来てくれるって信じてた……」
屈託なく言い切ったAに高杉はうっと、言葉を詰まらせた。
「ありがとう……。助けに来てくれて」
松陽、高杉の目を見てしっかりとした口調で感謝を述べるとAはそっと目を閉じた。しかし眠った訳ではなく、気絶した訳でも無い。
それは、安堵からくる長い瞬きだった。
「ヅラ、生きてるよな？」
「もちろん。今は気絶しているだけです。何も心配いりませんよ」
「……そう。よかった」
もっともっと深く瞼を閉じる。
心底から幸せそうに、息を吐くように言う。
「ヅラがいなくなったら凄く寂しいから、よかった。本当に、よかった」
言うと今度こそ眠りについた。
「A、」
「大丈夫。眠っただけです」
高杉の頭を撫で、またAの頭を撫で、また桂の頭を撫でた松陽はやっと純粋に落ち着いた笑顔で息をついた。
表情にこそ出さなかったが気が気ではなかったのだろう。
「……」
穏やかに戻った空気の中、
桂は薄目を開けてAの横顔を見つめた。
(……。A、ありがとう)
───俺はまたお前を"好き"になれた。
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佑依佳 - すごく良かったです。パスワードを教えてくれませんか (4月15日 10時) (
レス) id: 4b4e019a12 (このIDを非表示/違反報告)
LIARPIERROT(プロフ) - こちらの作品のパスワードは作者様が作者ページに掲載してらっしゃいます。確認してからコメントしましょう。 (12月21日 20時) (レス) id: 7068d0a9b2 (このIDを非表示/違反報告)
茜 - 初めて読みました。とても感動して続きを読みたいと思いました。なので続きを読ましていただきたくパスワードを教えてくれないでしょうか？これからも頑張ってください！！ (11月19日 15時) (レス) id: fd0a1b2f31 (このIDを非表示/違反報告)
菖蒲 - 続きを読みたいのですが、パスワードを教えてくれませんか？ (10月20日 12時) (レス) id: de6a447dfa (このIDを非表示/違反報告)
白虎 - 続きを読みたいのですが、パスワード教えてくれませんか？ (8月16日 23時) (レス) @page3 id: ec81a6d504 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：糸針
| 作成日時：2018年9月21日 23時
