33/正直な話竿とか要らない ページ33
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「オィィィ!!! あいつ何やってんの!? 何で激流に揉まれてんの!? ヅラァフラグ回収お疲れ様ァー!!!」
「言ってる場合かバカ!」
「とにかく追いますよ」
高杉にベシっと頭を叩かれ、珍しく笑顔を消した松陽にそう急かされた。
Aが
三人が全速力を出しても見失ってしまいそうになる程に、流れは早い。
「不味い、このままではっ」
「松陽!」
一際大きな一声が、走る松陽の背中を叩いた。
「A───」
「一番下流で迎えに来てくれ」
振り返った瞬間。
松陽の横を白い影が駆け抜けた。
遺言ともとれる言葉を投げ落とし、真剣を腰にぶら下げたまま、Aは、
「待ちなさい、A!」
ドボォォン! 激流に自ら飛び込んだ。
とうとう、松陽の目の届かない所まで二人は消えていった。
「っAー!!! 桂ァー!!!」
高杉のそんな叫びは、濁音に揉み消された。
────。
桂は空気を求め必死に手脚をバタつかせた。ただひたすらに呼吸がしたかった。激流に奪われてゆく体力、体温、全身を巡る血でさえもまるで氷水につけられたように温度を失っていく。
苦しい。苦しい。
空気が吸いたい。
それだけに縋る桂の心臓はダクダクと弱々しく脈打つ。
「ガッ……げぽっ」
口に大量の水が流れ込む。
水を飲みたい訳では無い。空気が欲しい。
予想外の液体の侵入に桂の体は悪寒を覚えた。一気に視界が霞み、指先から力が削ぎ落とされて。
「…………っお、お婆……ぁが」
真っ黒に、塗りつぶさ
「ヅラァァァ!!!」
「────!?」
その手を掴んだ。
その手を掴んだのは、Aだ。
「ふんっぐォォオオ」
真剣を底に突き刺し、これ以上流されまいと柄を握り締め桂の手を握りしめた。
その顔はとても女の娘とは思えないような、不細工で真っ赤で血管すら浮き出た必死なものだった。桂はうっすら、非力に瞼を開く。
自分を抱き寄せ、護る少女の姿を目にすると情けないと言わんばかりに眉間をくぼませた。
「知ってるかヅラァ!! 本当に釣り上げたい獲物を見つけた時はなァ、大人しく釣り糸垂れるんじゃなくて、こうして水ん中に飛び込んで自分の手で鷲掴んでやるんだよ!!!」
鼓舞するように叫ぶと、
桂を抱き締める利き腕に力を込めた。
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佑依佳 - すごく良かったです。パスワードを教えてくれませんか (4月15日 10時) (レス) id: 4b4e019a12 (このIDを非表示/違反報告)
LIARPIERROT(プロフ) - こちらの作品のパスワードは作者様が作者ページに掲載してらっしゃいます。確認してからコメントしましょう。 (12月21日 20時) (レス) id: 7068d0a9b2 (このIDを非表示/違反報告)
茜 - 初めて読みました。とても感動して続きを読みたいと思いました。なので続きを読ましていただきたくパスワードを教えてくれないでしょうか?これからも頑張ってください!! (11月19日 15時) (レス) id: fd0a1b2f31 (このIDを非表示/違反報告)
菖蒲 - 続きを読みたいのですが、パスワードを教えてくれませんか? (10月20日 12時) (レス) id: de6a447dfa (このIDを非表示/違反報告)
白虎 - 続きを読みたいのですが、パスワード教えてくれませんか? (8月16日 23時) (レス) @page3 id: ec81a6d504 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:糸針 | 作成日時:2018年9月21日 23時