30/ヅラじゃない、桂だ ページ30
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【小太郎視点】
「私がお前の将になってあげる。だから私といる時は、お前はただのヅラでいろ」
そう言って俺をゆるく指さしたA。
唖然とする俺に「なっ」と曇りなく笑った。
その瞬間、胸の中で何かが弾けた。
バチバチと、パチパチと心の器に砂糖まみれの飴玉が一気に数百個流し込まれたような気分に見舞われる。
止めどない糖分は心を突き破り、爪の先から髪の毛の一本一本、先端にまで至った。
───甘い。あまい。
これは一体、どんな機能不全だ。
「………」
お婆、聞きたいことが出来た。
『将たるは戦場で最も臆病でなければならぬ』
『誰より怯え誰より恐れ、』
『生き残る事が将の務めじゃ』
Aは、この"将"は、誰より恐れ知らずの死に急ぎヤローだぞ。
これがAだけのAなりの形だと言うのなら、なんて強い。この花は枯れることも知らない。自らで自らに水を与えている。
「ヅラと私二人きりの時は私が将で、私一人の時は気分で将やるから、その他は高杉が将ってことで」
これは何だ?
これは"将"と言うよりも、
「お前、言ってること滅茶苦茶すぎるだろ。"食虫植物"か」
……しょ、食虫植物?
「何だよ人が親切にシフト組んでやったってのに"食虫植物"呼ばわりか。ボリボリ食ってやろーかバリバリ噛み砕いてやろーか美味しく頂いてやろーか?」
「むしろ俺が食ってやるよバカ女。味付けは何をご所望だ? 最期の頼みぐらい聞いてやるぜ」
「誰がテメェなんかに頼むか!! ……山盛りの小豆で」
花とか例えたのはどこの誰だ。
食虫植物、なんて美しさとはかけ離れた相違の代物ではないか。
昆虫を食う植物だぞ? 花みたいに蜜を作ったり、蝶が羽を休めることも無いんだぞ?
「……ふ、はははっ」
「ヅラ? どうした大丈夫か」
お婆。将とは、よいものだな。
「高杉どうしよう。ヅラが壊れた」
「もう手遅れだ。燃えるゴミに出すぞ」
「出すなバカども。俺は壊れてなどいない」
竹刀を構え、いつもより数段柔軟な口角を上げた。
「お前達などに将が務まるか」
ただ気付いただけだ。
将というものに。
ただ解っただけだ。
目の前の友が、何故目の前の友に恋したのか。
ただ思っただけだ。
Aはどの女子より、優しく強いのだと。
「誰が将にふさわしいかハッキリさせてやる」
ただ、綺麗だと思ったんだ。
「上等だ。いくぜヅラぁぁ!!」
「ヅラじゃない、桂だ!!」
Aの笑顔が。
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佑依佳 - すごく良かったです。パスワードを教えてくれませんか (4月15日 10時) (レス) id: 4b4e019a12 (このIDを非表示/違反報告)
LIARPIERROT(プロフ) - こちらの作品のパスワードは作者様が作者ページに掲載してらっしゃいます。確認してからコメントしましょう。 (12月21日 20時) (レス) id: 7068d0a9b2 (このIDを非表示/違反報告)
茜 - 初めて読みました。とても感動して続きを読みたいと思いました。なので続きを読ましていただきたくパスワードを教えてくれないでしょうか?これからも頑張ってください!! (11月19日 15時) (レス) id: fd0a1b2f31 (このIDを非表示/違反報告)
菖蒲 - 続きを読みたいのですが、パスワードを教えてくれませんか? (10月20日 12時) (レス) id: de6a447dfa (このIDを非表示/違反報告)
白虎 - 続きを読みたいのですが、パスワード教えてくれませんか? (8月16日 23時) (レス) @page3 id: ec81a6d504 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:糸針 | 作成日時:2018年9月21日 23時