22/恋煩う間もなく燃え盛る ページ22
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───恋煩いとは、
恋の悩みによって病気のようになった状態のことを言う。どんな病気よりも厄介な恋の
その病に侵された悲運な少年、高杉晋助はある笑顔を忘れられずにいた。
四六時中何をしていても頭に浮かんでくるのは、
「だから、明日もやろうね。高杉」
初めて見せた少女の清い笑顔、自分の名前を紡いだ心地の良い声だった。
「…………」
柵を隔てた向こう側、そこには昨日稽古場で笑い合った少年たちと、その彼らに勉学を教える松陽。
一番後ろの席で刀にもたれ掛かり、ぐーすか寝息を立てているAの姿がある。
後ろの席なら大丈夫! とか高を括っているのだろうか。松陽相手に席の場所云々は関係ない。
予想通り、Aの額に轟速の筆が衝突した。
それを投げたのは言わずもがな松陽で。
痛覚により睡眠を強制終了させられたAはバカみたいに飛び起きる。そんなバカ姉に皆が笑った。
「フッ……」
恋をしているかどうか分からないほど精神年齢の幼くはない高杉だったが、愛おしいと無意識に想う
その目が酷くあたたかな事にも。
「いたいた。本当に噂通りだ」
「? ………」
振り返った瞬間、あたたかさは消え失せた。
「こんな怪しげな寺子屋にご執心とは」
そこには、Aに小石でKOされ、Aに顔面を踏みつけられ、それでもAに顔すら覚えられていない垂れ眉の少年が立っていた。
その後ろには毎度お馴染みの群れが。
「残念だったな高杉。今晩にもこの寺子屋は潰れる。あの浪人も、あの小汚いクソ女も終わりだ」
「………、」
浪人、小汚いクソ女。
それは紛れも無く松陽とAの事。
高杉の端正な眉が、微妙ながら不快感を表すように歪んだ。
「低次元の貧乏人が武士に向かって石を投げつけ、顔を踏みつけたのだ。本当なら首が飛んでもおかしくない」
「……」
「あんな得体の知れぬ化け物は我々の世界にっ」
高杉が、少年の胸倉を掴み上げた。
それ以上は言わせない。ドス黒く少年を睨む緑の双眸がそうして叫ぶ。
化け物……とは、Aの容姿を元にほざいたのだろう。
許せねェ。
ただそれだけの怒りが少年の喉元を締めてゆく。
「なっ、き、きさま、離せっ……!」
「その首の皮が繋がってるうちに俺について来い」
ゾワッ───。
たった一発の殺気が、少年らの身体を縛った。
「お前だけは、この手で叩きのめす」
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佑依佳 - すごく良かったです。パスワードを教えてくれませんか (4月15日 10時) (レス) id: 4b4e019a12 (このIDを非表示/違反報告)
LIARPIERROT(プロフ) - こちらの作品のパスワードは作者様が作者ページに掲載してらっしゃいます。確認してからコメントしましょう。 (12月21日 20時) (レス) id: 7068d0a9b2 (このIDを非表示/違反報告)
茜 - 初めて読みました。とても感動して続きを読みたいと思いました。なので続きを読ましていただきたくパスワードを教えてくれないでしょうか?これからも頑張ってください!! (11月19日 15時) (レス) id: fd0a1b2f31 (このIDを非表示/違反報告)
菖蒲 - 続きを読みたいのですが、パスワードを教えてくれませんか? (10月20日 12時) (レス) id: de6a447dfa (このIDを非表示/違反報告)
白虎 - 続きを読みたいのですが、パスワード教えてくれませんか? (8月16日 23時) (レス) @page3 id: ec81a6d504 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:糸針 | 作成日時:2018年9月21日 23時