【場地圭介】狼さんは孤独がお好き (ページ10)

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『ただいま』

そう言って家の中に入るも、返ってくるのは静寂のみ。

『帰るの遅くなっちゃったね。ごめん』

それでもお構いなしに話し続ける。

どことなく虚しい気持ちを、振り払うかのように。

『圭介君がさ.....あ、圭介君っていうのは、前話した隣の部屋の人なんだけど。その人に勉強教えてたらこんな時間になっちゃった。今夕食作るからね』

エプロンを巻いたところで、携帯が鳴る。

アキから電話だ。珍しいな.....

『アキ？どしたの？』
｢あ、A！ちょっと聞いて欲しいことがあって..... ｣

アキが話した内容は、もう私には関係のないこと。

彼女だってそれはわかっている筈だ。

それでも電話をしてきたのは、私の性格を知っているが故だろう。

『.....話はわかった。でもごめん。しばらくそっちに行く予定がないの。引っ越しの前に、澪(みお)には挨拶したからさ』
｢あー.....そうか。そうだったね｣
『だから、情報だけ集めてくれるかな。次にそっち行く時、私があの子達と話をするよ。勿論、アキにもついてきてもらうけど』

そう言うと、電話口でアキは笑った。

｢Aはそう言ってくれるって思ってた｣
『アキが1人でやってくれても良いんだけどね』
｢本気で言ってる？アタシの言葉が意味を持つのは、Aがいてこそ、だよ｣

.....そうだろうか。

私にはよくわからない。

あの子達が私をどう思っていたのか。あの日、どんな気持ちでいたのか。

｢じゃあね。あ、ボッチやめなよ｣
『やだよ。これが良いの』

そう笑って、通話を終える。

『.....あと1ヶ月弱は、あっちに行く予定ないなぁ』

小さく呟いて、夕食の準備を始めた。