【場地圭介】狼さんは孤独がお好き (ページ9)

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とある日の放課後。普通に帰ろうとすれば、千冬君が教室に来て、私を2年の教室まで引きずっていく。

そしたらこれだ。

『だからそこは、これに代入するの』
｢こっちか？｣
『違う。逆』

同じ説明を、もう4回は繰り返しただろうか。

場地君に勉強を教えるのは至難の技だ。

｢Aさん、ここ教えて欲しいっす｣
『んー？嗚呼それはねぇ..... 』

千冬君に教えているのを、場地君がじっと見つめてくる。

『.....場地君、自分のやりなよ』
｢なぁ、なんで千冬は名前なんだよ｣
『は？』
｢オレは場地君で、なんで千冬は名前なんだ？｣

.....今更だな。

まぁ千冬君は、名前で呼んで欲しい、みたいなこと言われたから仕方なく.....って感じだけど。

『じゃあその問題正解したら呼んであげる』
｢.....わかった｣

まぁどうせ間違ってるだろう、今までの流れだと。

別に名前で呼ぶくらい構わないが.....懐かれそうでなんとなく嫌だ。

｢おらよ｣

此方に向かって、乱暴に投げられるノート。

そこに書かれてある汚い字をなんとか読み解く。

『.....なんだ、やればできるんじゃん』
｢で？｣
『............圭介、君。これで満足？』
｢おう｣

ホントに満足そうに笑うから、調子狂う。

『ねぇ、一個聞いて良い？』
｢あ？｣
『ば.....じゃない、圭介君、私とタメなんでしょ？なんで使ってる教科書、千冬君と一緒なの？』

圭介君の顔が険しくなる。

触れちゃいけなかったかな.....

答えなくても良い、と言おうとすると、圭介君が口を開いた。

｢ダブった｣
『え.....ダブった？』

ダブった.....留年した.....ってこと？

え、中学生が？中学生って留年とかあるの？

逆に聞きたい。何したら留年になるの？

｢あ、そろそろ出ないと怒られますね｣
｢もうそんな時間か｣

何事もなかったかのように片付けを始める圭介君。

.....ま、触れられたくない話くらいあるか。

それ以上の言及はせず、私も片付けを始めた。