【場地圭介】狼さんは孤独がお好き (ページ33)

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3 1 話ページ33

圭介君は、猫みたいな人だった。

その時の気分で行動を決めるような、そんな人。

そして猫みたいに＿＿＿

私の知らないところで、死んでしまった。

“なぁ知ってるか？猫って自分の死ぬ姿、飼い主に見せないらしいぜ”

得意気に話す彼の姿が、脳裏に浮かぶ。

そんなとこまで、猫に似なくていいよ.....圭介君の、バカ。

｢あの.....Aさん、大丈夫ですか.....？｣

千冬君の声にはっとして、顔を上げる。

『.....うん、ごめん』
｢.....すいませんでした。オレ、守れなくて｣
『千冬君は何も悪くないよ。謝らないで』

辛いのは彼も同じだ。あれだけ慕っていた人を、目の前で失ってしまったのだから。

きゅっと口を結ぶ。

私が今ここで泣いちゃ駄目だ。

1ヶ月も付き合っていない、最早恋人と言えるのかもわからない私なんかより、千冬君の方が泣きたい筈。

それでも私のところに寄って、圭介君のことを伝えてくれた。

なら私は、せめて彼の恋人らしく、現実をしっかり受け止めないと。

｢.........Aさん｣
『ん？』
｢場地さんから、Aさんに.....伝えてくれって、言われたことがあって｣

千冬君がゆっくりと、圭介君から受け取った言葉を紡いでいく。

.....あ、やばい。

視界が滲む。

拳を握って涙を堪らえようとするけれど、瞳に張った涙の膜が決壊して、熱い水が頬を伝った。

爪が手の平に食い込んで痛い。心も、痛い。

｢＿＿＿だそうです｣

千冬君の口が閉じる頃には、もう取り返しがつかないくらい涙が溢れてしまっていて。

｢.....すみません。オレ、ホント.....すみませんでした｣
『ちがっ........違うの.......ごめんね、千冬君何も.......っ.......何も、悪くないからね......... 』

ごしごしと目元を拭って、無理に笑顔をつくる。

私の涙を拭ってくれる彼は、もういない。しっかりしなきゃ。

『........千冬君』
｢はい｣
『お墓参り、行ってもいいかな.....？私圭介君のこと.....ホントに、好きだったんだ.....どうしようもないくらい、好きだったんだよ..... 』

再び涙を流す私を見て、千冬君は笑う。

｢当たり前じゃないですか。Aさんが行かなかったら、場地さん悲しみますよ｣
『.....ありがとう、千冬君』