珊瑚と人魚 ページ7
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『海はもう無理ですっ！』
冷え込む朝、休日の校内は静かで声がよく響く。摩訶不思議な空間の鏡の間でも、冬は寒いらしい。
ユーゴの提案を飲んだAは、「明日の早朝、制服で鏡の間へ来い」と言われ、肩を震わせながら闇の鏡の前へで待っていた。待ち合わせ時刻の五分前についたユーゴの手には魔法薬があった。
「珊瑚の海へ行くぞ」
『無理ですが！？』
そうして今に至る。彼はアズールたちが何をして接近禁止命令を出されているのか知らない。Aは一から説明しようとした。
『私、呼吸器系の魔法薬は服用禁止で……』
「これはキミのじゃない。僕が使う」
彼の謎発言に首を傾げている間にも、彼は小瓶の中身を飲みきった。
「……おぇっ、僕が死ぬ前に行くぞ」
『えっ、ちょっと……』
「闇の鏡よ、僕たちを珊瑚の海へ導きたまえ」
グッと手を掴まれて抵抗する間もなく、鏡が眩いほどに光り始めた。吸い込まれる感覚と同時に、Aは死を決意し瞼を閉じた。
水に包まれる感覚を覚悟していたが、全くそんなものはなく、身体にはなんの異変もなかった。ただ少し、磯臭さを感じた。
「おい、目を開けろ」
『死んでませんか私』
「死んでるなら喋るなよ」
Aはゆっくりと、確かめるように目を開けた。するとそこには、確かにあの日見た珊瑚の海が広がっていた。自分の周りを見渡すと、身体の半径一メートルほどを空気の層ができていた。全く状況が掴めないAに、ユーゴが落ち着いた口調で話した。
「キミの身体を囲んでるのは水中に含まれた酸素。僕が無策でキミを海へ投げ入れる訳がないだろ。」
『すいません、てっきり知らないものかと……』
「流石にキミの持病くらいは寮長から聞いてる。」
呆れたように溜息をつく彼の身体は、制服姿のままだった。Aは首を傾げた。
『先輩は元の姿には戻らないんですか？』
「僕の故郷は珊瑚の海よりもっとあたたかい海だ。こことは水の質も濃度も、住んでいる人魚たちも全然違うよ」
彼曰く、ヒト属の姿で呼吸をしていた方が余程マシだとか。まさか海にはそんな事情があるとは。Aは興味深く耳を傾けた。
「キミにかけた魔法に集中するので精一杯だし、余計なことはしないよ」
『やっぱり人魚の姿だと泳ぎたくなりますか？』
「まだ生きていたいなら余計なことは言わないことだな」
マジカルペンをこちらへ向ける彼に黙って従うことにした。これから行く先に、一体何があるのかも知らずに。
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天(そら)(プロフ) - ｍさん» コメントありがとうございます。この作品は自分の夢と妄想でできた自分のための夢小説なので、自分以外の誰かから評価をいただけるのは本当に嬉しいです。自己満足の作品のため期待に添えるかわかりませんが、最後までどうぞ見届けてください。 (6月4日 22時) (
レス) id: 6c60cd58bf (このIDを非表示/違反報告)
ｍ(プロフ) - コメント失礼します。作品の中に惹き込まれ、いつの間にか一日中読んでいました。こんなにも綺麗で面白いお話に出会え、心から嬉しいなと思います。これからの展開や夢主の心境の変化等、ワクワクすることでいっぱいです。これからも心から応援しております。 (6月4日 15時) (レス) @page19 id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時：2023年5月14日 15時
