【Dr.STONE】歌声に想いをのせて

voice.31 ページ35

「さ〜〜あとっとと消すぞ。万が一司が追ってきてたりしたら100億％見つかるからな」

せっせと温泉のお湯をくみ、火の元にかけていく。
こんなに黒くて大きな煙、他に人がいるのであれば助けてもらえるかもしれないが、今じゃ敵に知らせるだけのものにしかならない。

なんとなく、本当になんとなくなんだけど私の勘が告げている。この火を消さないと千空がいなくなってしまうかもしれないと、何故かそう思うのだ。

だから、杠が見つけた狼煙を見た時に心が引き裂かれたように痛くなった。
だって分かるもん、あんな狼煙を見てしまったら千空は『安全』よりも『未来』をとってしまうことを。
たとえそれで、自分が司に殺されてしまうことになったとしても。

「どうする千空！消すのか！？点けるのか…！？」
「点けるぞ！狼煙を上げろ！！！」




◆




「A見ろ！狼煙が3本も上がっているぞ！もう間違いない人がいるぞ！」

千空の指示の元燃えやすい薪を集めに温泉より少し離れたところに来ていた。
狼煙を上げている場所に千空、そこから杠、A、大樹の順番で狼煙から距離を取り薪を拾い集めている。本当は温泉地に千空一人になんてしたくなかったけど「俺なら大丈夫だ」の千空の言葉を信じ、薪を集めている。

私に声をかけてきた大樹は既に両手いっぱいに薪を持っていて温泉地へと帰る途中であった。
ホワイトボードを薪拾いの邪魔になるからと千空に預けてきたので大樹の目を見て表情だけで伝わるようにニコリと笑って見せた。

私もある程度の薪を集めたので大樹と一緒に千空達の元へ歩を進めた。
ある程度戻ったところで、ふと、人の気配の数が増えていることに気づいた。

(三人分…？千空と杠と…もしかして…)

持っていた薪が足下に散らばってしまったがそんなものを気にしている余裕はなかった。急いで大樹の服を掴み駆け足で戻ろうと促す。

「どうしたA！薪が落ちてしまうぞ！！」

薪をしっかりと抱えながらも私のスピードに着いてきてくれる大樹。ホワイトボード、置いてくるんじゃなかった。私なんかよりも足の速い大樹に今の危機を伝えられないことを後悔した。

(声が出たら…今まで何してたんだ私は！)

今まで声を出すことをしなかった自分の行動を悔やんでいたら「大樹くん、A…！！」と微かに杠の声が聞こえた気がした。

「微かに聞こえた今の声は…すまんが先に行くぞ！」

私を置いて走り出した大樹の後を少し遅れながら追いかけていった。

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