【Dr.STONE】歌声に想いをのせて

voice.11 ページ15

「フルパワーでフラれるに100円」
「フラれるに500円」
「フラれるに1000円」


好き勝手言い出す科学部の面々に苦笑いする。
「意外とフラれねえに1万円」ピッと自動販売機のボタンを押しながら賭けに参加する千空。


「[私もフラれないに1万円！]」
「Aこれ」


やるよ、と買ったばかりの飲み物をくれる。私の好きなミルクティだったので、さすが千空よく分かってるなあなんて思う。後ろではマジか！と驚いてる科学部の面々。みんな分かってないなあ、あの二人のこと。私と千空は飲み物を飲みながら告白を見学することにした。


(告白かあ…)


少し羨ましく思えてしまう。
告白…というか恋愛なんて私には一生縁がないことなんだろうな。今の私は千空がそばにいないと生きていけないし、そんな女誰も貰ってくれないだろうからなあ。
まあ、なんだかんだで千空は優しいから、私がこのままの状態ならいつかは結婚とかしてくれそうだけど。
ただそれは合理的に一緒に居てくれる理由ってものを作ってくれるにすぎない。
(でもそれって私が千空の足枷になってるよね)

ただただ、千空の優しさに甘えてしまっているのは分かっている。早く千空離れしないとなあ。

ふう、とため息をつき窓の外を見るとクスノキの下で見つめ合う大樹と杠が居る。2人とも顔が真っ赤だし、聞こえてくる呼吸もいつもより荒い。
ドラマとかでこういうシーン演じたことあるけど、実際の告白シーンとか初めて見る。ドラマとは違った緊張感にドキドキしてしまう。


「聞いてくれ杠！俺は5年間ずっとー…なんだあれは」


大樹の視線の先にはまるで世界を包み込むかのような光が襲いかかってこようとしていた。
突然現れた光にみんな言葉が出ないようだった。
わあ、綺麗な光だなあと呆然としていると、こちらを向いた千空に力任せに腕を引かれ抱きしめられた。
なにがなんだかわからないまま視界は真っ暗になってしまったのだ。


「A！！！」


最後に聞こえたのは私を呼ぶ千空の声と、抱きしめられられた時に感じた千空の温もりと千空の匂いだった。


(あぁ、この匂い、この声、好きだなあ…)




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