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うるさく鳴り響く目覚ましを、やっとのことで止めた。
寝ぼけまなこで時間を確認した瞬間、一気に目が覚めた。
明らかに、時間ギリギリ。
あと15分以内で家を出なければ、まず間違いなく間に合わない。
遅刻しないだろうかという不安を抱えながら、慌ててブレザーに腕を通し、食パンを口に押し込んだ。
リュックを右手に持ってドアを左手で開け、狭い廊下に出た。
誰もいない階段をダッシュで駆け下りていくと、風に乗って飛んできた冷たいものが頬に触れた。
外では、粉雪がふわふわと空を舞っていた。
4月なのに、雪？
今まで雪なんてほとんど見たことがなかった私は、そのきれいさに見惚れながら階段を降りて行った。
建物を出てさらに激しくなった雪の中を、風に逆らうようにして進んだ。
いつもより一本遅い電車に乗って、急いで改札を通り階段を駆け下りた。
少し道を行くと、白い視界の中に動く人影が見えた。
「A、おはよう！」
聞き覚えのある、明るくてよく通る声が聞こえてきた。
「紬？おはよう」
駆け寄ってきた紬と二人で、昨日みたいに並んで歩いた。
「時間、ギリギリだよね」
「うん。誰もいないから間に合わないかと思ってた」
「私も。Aに会えてよかった」
「私も紬見かけたから、安心した」
「あっ、信号」
話しながら歩いていると、目の前の信号が赤になってしまった。
赤になってしまったものは仕方ないから、その場で立ち止まった。
まあ、例え遅刻しても、紬と一緒にいられる時間が長くなったと思えばいいだけの話だし。
雪は止む気配を見せずに、無音の空間を作り出していた。
「シーっ」と、紬が自分の口に指を当てた。
「うん？」
「静かだね。雪降ると、静かだね」
「うん」
「ねっ！静かだよね！」
「うるさい」
「うん？」
「紬の声。うるさい」
「A、静かだね〜！」
紬がちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべながら、さっきよりも大きな声で繰り返した。
私は、「うるさい」と苦笑交じりに返した。
「シーっ」とさっき紬がやった通りのことをしたけれど、やっぱり静かにはなれなくて、二人で笑い続けた。
信号が変わって時計を見ると、遅刻まで後5分。
「急ご！」
「うん」
私たちは転ばないように注意して、早足で道を急いだ。
暗い中にも少し光が差し込んでくる空に、包まれながら。
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