14 ページ14
「いいよ。家の電話とかは使える？」
全くがっかりしたり嫌そうな素振りを見せずに、紬は私の方を笑顔で見つめてきた。
「……不便だな、とか思ったりしない？」
「事情とかはみんな違って当然だし、私だって高校の入学祝いにようやく買ってもらえたんだよね。だから分かるよ、Aの気持ち」
中学校でスマホを持っていないのだって、すごく辛かった。
紬も同じ気持ちだったのを知って、仲間を見つけたような気持ちになった。
「ありがとう。私、インスタなら使える」
「私もインスタやってるから、フォローしていい？」
「いいよ」
紬が私のアカウントのユーザー名を検索欄に打ち込んで、フォローリクエストのボタンを押した。
「これでいけたはず」
「フォロリク許可しておくね」
「ありがとう。じゃあ、また明日」
「うん。またね」
大きく手を振る紬につられて、私も小さくだけど手を振り返した。
空に輝く星たちでさえ、私の未来を照らしてくれているんじゃないかと思えた。
家に帰った後すぐにPCを起動させインスタを開いて、紬から来ていたフォロリクを許可した。
インスタなんて、今まではアカウントを作って放置していただけだった。
あの時なぜアカウントを作ったのか謎だったけど、結局無駄にならなくてよかった。
私のインスタの人生初のフォロワーが紬だということが、とてもうれしかった。
その流れで、紬のインスタもフォローした。
高校になってスマホを買ってもらったばかりとは思えない紬のフォロワー数に、感嘆のため息が出た。
すると、待ち構えていたかのような速さでDMが来た。
「今日はありがとう。これからもよろしくね！」
「こちらこそ、よろしくね」
いつもよりも、キーボードを打つ手が早く動いたような気がした。
紬から送られてきたのは、すごくかわいいパンダのイラストが入ったスタンプ。
私も送りたいけれど、PCからではスタンプが送れない。
絵文字を一個だけ送るとスタンプみたいになるから、ニコちゃんマークの絵文字を探して送った。
いいねがつけられて、さらに気分が上がった。
その時、ガチャッとドアの開く音がした。
ヤバい、親帰ってきた……！
PCで遊んでいるのがバレたら、「そんなことより勉強しなさい」と怒られて取り上げられるに決まってる。
紬とやり取りできんくなるなんて、絶対嫌だ。
案の定すぐに、「A、晩ご飯！」という不機嫌そうな声が聞こえてきた。
静かにキーボードを叩きながら、「は〜い」と適当に返事をした。
「晩ご飯食べてくるね」とだけ返信して、私はPCをシャットダウンして充電器に接続した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 516人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
