プロターゴニスト(男主/Jr.)2 (ページ34)

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22.天才の裏の顔/Souta.U

「あー…むり。山とかさぁ…誰だよ山なんて言い出したやつ」

ぶつくさと文句をたれるA。

学校終わり、歌の自主練と称して2人でカラオケに来ていた。
注文したポテトをつまみつつ、課題をやりながら駄弁っていた。

「Aは遠足とか嫌い？」

「山とかさぁ…何が楽しいんだよ。虫とか無理」

Aは虫とか怖がらない。ずっと都会でエリートとして育っているAは蝶やカブトムシとかですらキラキラした目で見る。
けど、蚊とか小蝿とか、自分に害がある虫は嫌い。だから夏場の田舎の田んぼ道とか、山とか嫌がる。

「遠足企画なら工場見学とか雪遊びとかにしよーよぉ…」

「寒いのも嫌がるじゃん」

「ふぇぇ…」

まるで幼稚園児のように駄々をこねるAは、普段のしっかりした感じと違って可愛い。

「途中でお菓子も買って食べれるって！俺と交換しよ！ね！絶対楽しいって！！」

「そんなの楽しいけどいつでもやるもん！はっ！？お菓子パーティー企画は！！？？それぞれお菓子持ち寄って推しお菓子をプレゼンする！！！」

「お外！！！たまにはお外で撮影しよう！！？」

ぴぇぇぇぇ！！！と聞こえて来そうなほどバブなAは、相当次の遠足企画が嫌らしい。

週一のYouTube企画、次は山登りの予定。
前々から企画担当として企画内容を知っていたのに、愚痴れなくてたまってたんだと思う。メンバーに発表されるや否や珍しく誰か遊ぼうと言い出し、争奪戦に勝利した俺はカラオケに連れられ駄々を聞いている。

「A企画なんだから変えられたんじゃないの？」

「…だって、僕だって皆で外ロケしたかったし。それに、皆喜ぶでしょ」

こうやって誰かの為に自分のワガママを捨てられるから、Aは人から好かれる。

「虫除けガンガンに撒いて、1匹残らず駆逐してやる…えいっ」

流れに乗って紅蓮の弓矢を選曲したAに爆笑しながら、2人で歌う。

うまいけど、ステージでは見れないちょっとふざけた歌い方。
課題そっちのけではしゃぐAは、こういう時だけ年相応。真面目だし、十分実力も知名度もあるのに驕らないし、一緒にふざけてもくれるから楽しいし好き。

動画でも、なんでも、Aは見る人全てを惹きつけるし、誰にだって好かれる。
だからずっと独り占めなんて出来ないし、Aのこと自慢したい反面、離れていくのが怖くてモヤモヤする。

「(一緒に、デビューしたい、なぁ…)」