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イデアは目を閉じ、すうと息を吸った。少しして、ゆっくりと目を開けた。監督生はそれを見てびくりと体を震わせたーー彼の瞳があまりにも冷たく斬りつけるような攻撃性を孕んでいたから。
「あのさ」
短く前置きして、イデアはグッと腕を押した。視界と重力が回転してどさり、監督生はベッドに押し倒されていた。その腕の力とくっつきそうなほどの彼の顔、腰を打ち付けた痛み、
「何がしたいわけ? 陰キャを弄んで楽しい? 陽の者の分際で好き勝手近づいてきてこっちの気持ちも知らないで、いや極めて短慮ですわその模範生ムーブ。君のせいで僕はいちいち期待と失望を繰り返さなきゃいけないんですけど? どうせすぐ離れていく癖にさ、僕にまで優しくするなよ。責任取れとかキモいこと言わないからさっさと僕の中から消えてくれる?」
一度に捲し立てられた言葉の半分も監督生には飲み込めなかった。自らに覆い被さる大きな体がただ恐ろしい。広い背中から垂れ落ちた彼の髪は延焼するように、いつの間にか監督生の腕や足に絡みついて揺れていた。ゆっくり、体を上って侵食するようにうねる青い炎、その異様な感覚に喉奥を震わせながらも、それでも彼に言葉を届けようとして、監督生は必死に口を動かした。
「先輩、イデア先輩が苦しんでることがあるなら、私、手伝いますから……」
その言葉がイデアの神経を逆撫し、文字通り火に油を注ぐことになったのは言うまでもない。「はあ?」と短く、軽蔑するような一言が監督生の心を締め上げる。青い髪はさらに激しく燃え上がり絡みつき、監督生の小さな体を丸呑みにするかのようだった。
「いやいや何それ、何? この流れでそんなこと言います? こんなキモい陰キャで呪われてる奴の部屋に連れ込まれて言うに事欠いてそれって、これが流行りの聖母系受けって奴? いやあ脱帽物の馬鹿ですわ。……ねえ、それなら」
ふっ、とイデアの瞳から冷たい怒りの色が消えた。安堵も束の間監督生はさらに青ざめる。彼の琥珀色の目にふつふつと湧き上がる、情の色を孕んだ熱が、じっとりと這い回るような視線を監督生に投げかけていた。
3→←そんなつもりじゃなかったのに手篭めにされちゃう感じのイデ監(微裏)
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しい(プロフ) - あやふやさん» コメントありがとうございます。頑張ります! (2020年10月12日 18時) (レス) id: 6987cf2560 (このIDを非表示/違反報告)
あやふや(プロフ) - 好みの作品です!更新頑張ってください!! (2020年10月12日 16時) (レス) id: 303d8e2bcc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しい | 作成日時:2020年10月5日 0時