12. たいせつに ページ12
数分後、兄ちゃんが戻ってくる。
「……おい、何してンだよ、勝手に入ってくんな。」
溜息交じりにそう言うとベッドに腰かける。
兄ちゃんの方を見るとじとりとこちらを睨んでいるのが分かった。
美味しそうなバナナジュースをもっていたのでのそりと起き上がり兄ちゃんにもたれかかる。
「それ飲みたい」と言うと「ヤダ」と即座に断られてしまった。
少しむくれていると、静かなトーンで語り掛ける。
「…お前は何も気にしなくていい。」
たった一言だったが私は確信した。
兄ちゃんは影山と手を組んでいるわけではない、兄ちゃんなりに探ってるんだ。
それに気づいてしまった以上何もせずにいられるわけがない。
『私にも何か手伝えることは無いか』そう尋ねようとした瞬間だった。
「お前のことはぜっっってぇ巻き込まない。 頼むから影山のことに首突っ込むなよ。」
「流石兄ちゃんは私が考えてることすぐ分かるんだな。
でも私だって……兄ちゃん一人を危ない目に遭わせたくない。」
兄ちゃんが私の事を心配してくれているように私だって…。
ひとりだけでなんとかしようだなんて無謀すぎる。
「お願いだよ兄ちゃん、私も一緒に行かせてくれよ」
兄ちゃんの前に座り目をじっと見つめる。
だがすぐに視線を逸らされてしまった。
「…もう部屋戻れ。何言われても変わんねーよ。」
時計を見ると消灯5分前だった。
……これ以上は粘れないか。兄ちゃんの力になれない自分が悔しい。
「分かった、今日は戻るよ…。
でも…絶対、絶対私のこと1人にしないでくれよ。」
私の言葉に兄ちゃんは何も答えなかった。。
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作者名：リリィ | 作成日時：2022年9月11日 11時
