009-5 ページ42
町並の家々がひとつの発光体となったそれらが射出する夜の灯で、緑を取りまいて列をつくっていた若い並木に浸みあまった灯の光は神経質に切れ上がった男の瞳を照らし、吐き出された無音のため息が彼女の耳朶をやさしく撫でた。
細かい霧のような微かな焦燥を漂わせる片桐を、Aは髪を触るフリをしながら少しだけ首を伸ばして見上げる。剛田と拳を突き合わせてからどこか上の空で、理性と本能が衝突して波を立てているのか声をかけても生返事ばかりだ。
―――頭って、何なんだろうな。
抑揚のない、泡が消えるときのような片桐の呟きがAの脳裏をかすめる。当たり前だと思っていたことが、当たり前じゃないのかもしれない。そう一瞬でも思ってしまえば今まで抱いていた価値観が紙細工のように簡単に崩れ始め、気が揉めてもどかしくなってしまう。
「ねえ、相良さん」
Aは隣を歩く相良に身体を寄せ、轟くような小さな声を鳴らす。相良の腕がAの華奢な腰にまわり、弛緩しきっていた筋肉が急に引き締まったような反応をみせる彼女に胸が轟いて、咎めるような視線を投げられつつも頬の隅に僅かな微笑を浮かべた。
「なに、どうした？」
「･･･最近の智司さん、何だか浮かない顔ばかりしてるわ。何かあったの？」
「はァ？」
何がどう浮かない顔をしているのかとAに訊ね、相良も目の端で一瞬だけ片桐に視線を投げる。些か陰鬱に沈み込ませるような表情にも見えるが、「ここ、痛むでしょう？」と剛田の拳が直撃した唇の端に触れるAを見つめる瞳は小さく熱を帯びて、彼女の頭を撫でる手つきも、彼女に話しかける声も、生命と同じくらい大切にしているのが伺えた。
「何ともなさそうじゃねェか」
従兄といえど男に触れられている事自体に苦いものが込み上げ、相良はAの腰に添えていただけの腕に力を込めて引き寄せる。気に入らない、そんな気持ちがぐつぐつと沸き立つ相良の気持ちを知る由もないAは彼の言葉に対して腑に落ちないという風に首をかしげ、「そう･･･」と、息に近い声をもらした。
いつだったか、Aは片桐のことを�狢臉擇平有瓩世噺世辰討い拭Ｊ匐佑�Aのことをただの従妹だと言っていたが、彼女を護ろうとする姿は�爐燭世劉畚硝紊箸聾世て颪ぁ�心から流れてくる一筋の情熱、そして染み出た恋慕。
「A、そんな心配すんな」
「智司さん･･･」
なぜか、胸が絞めつけられて息苦しさを感じた。
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綾波(プロフ) - ナスさん» 初めまして！すごく好きだなんてとっても嬉しい限りです…！相良君とゆっくり恋を育んでいきたいと思っておりますので、これからの展開とドキドキ感のご期待に添えられるように頑張ります！ (2020年9月2日 23時) (
レス) id: b41655ec04 (このIDを非表示/違反報告)
ナス(プロフ) - きゃ〜！お上品かつ、聡明な小説でその上ドキドキしちゃいます。すごく好きです……！これから発展していく恋愛に期待してます！応援してます。 (2020年9月1日 1時) (レス) id: 28e97fe75f (このIDを非表示/違反報告)
綾波(プロフ) - 如月さん» 初めまして！面白いと思っていただけて大変嬉しいです！これからもまだまだ更新していきますので、今後ともぜひ宜しくお願いします(*´ `*) (2020年8月27日 19時) (レス) id: b41655ec04 (このIDを非表示/違反報告)
如月 - 面白くて一気見しました！ (2020年8月27日 17時) (レス) id: 9293909c4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：綾波 | 作成日時：2020年8月14日 13時
