【wrwrd】至福を教えて【短編集】 (ページ21)

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その瞳が全ての答え4 ページ21

是も否も示さないAの瞳はゾムの意思を汲み取ろうとゾムの若草色の双眸を覗き込んだ。

「…Aが欲しいって言うたら、どうする」

逡巡躊躇った後に問いかけられたゾムの抽象的なその言葉の真意に見え隠れする意図を察し、またAは目を見開いたが、揺れる若草色に気が付いて胸の奥まで詰まるほどの愛おしさを感じて小さく息を呑んだ。
飽くことなく求められても、Aを大切に想う気持ちも同じくらい感じられて幸福感から眩しそうに目を細めた。
恥ずかし気に目を伏せたのは一瞬、すぐにまたゾムを見つめながら、感じる愛おしさを隠すこともなく甘さすら感じる声で答えた。

「私はもう、ゾムさんのものです。ゾムさんが望むなら、いくらでもどうぞ」

いっそ後頭部が酩酊するほどの甘い感覚がゾムを襲い、ぐっと奥歯を噛んだ。
大切にしたくて、傷つけたくなくて、だけどきっとこの衝動のままAを欲してもAはそれすらも愛してくれることを理解してゾムはもう一度Aの唇を性急に奪った。
Aの口の端から微かに漏れる掠れた高い声がゾムの頭の酩酊具合を加速させたが、それを理性で抑え込んだゾムは惜しむように唇を離すとAの隣に寝転んだ。

「今日はもう遅いから、一緒に寝るわ」

「分かりました」

さり気なく腕枕として片腕を出すゾムの行動を読み取って嬉しそうに頭をそっとその腕に乗せるAを抱きしめながら、ゾムはさっきからずっと疑問だった問いを投げた。

「そういえば、なんで起きてたん？いつもなら寝とる時間やん」

「ちょっと読書で夜更かししてたんです。寝ようとした時に鬱さんからこのあとゾムさんが来られるかもしれないと聞いたので、待ってました」

「…読まれてんなぁ」

「ふふ、鬱さんがゾムさんのことを心配してましたよ」

ため息をついたゾムだが、Aはくすりと笑みを一つ零した。
行動が読めてしまうほど、鬱先生がゾムをよく理解している事実に微笑ましさを感じたが故だった。
Aにとって、何故こんな時間にゾムが訪ねてきたか問う必要はなかった。
ゾムが自分の元へ帰ってきて、いつも通り溺れそうなほどの熱を持って若草色の双眸が自分を見てくれるだけでAにとってはそれで十分だった。

「…おやすみなさい、ゾムさん」

「おん、おやすみ。A」

優しくAを抱きしめたまま目を閉じるゾムを見てから、Aも抱きしめられる温もりと幸せを感じながら良い夢が見れる予感に目を閉じた。