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「いや、マスターは、大丈夫なんですけど、」
紫耀「…ゾウさんはよくてボクはダメ？」
「あー…そうなりますね。」
紫耀「えっ、まさかニオイとかですか？俺、臭いかな……」
真剣な顔で脇をクンクンと嗅ぐ、綺麗なお顔立ちの王子様。
……私はというと、入口の扉の前でカバンを胸に抱えて、警戒態勢のまま。
「…ところで、マスターはいつお戻りに？」
紫耀「あ、実は今ちょっと入院してて」
「えっ、大丈夫なんですか」
紫耀「はい、まあ軽いぎっくり腰です。
で、その間ボクが代わりに。」
よろしくお願いします、と変わらずカウンターの中で深くお辞儀をされ、私もつられてお辞儀をする。
……ん？ ということは。
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「これから毎日、お店に出るのは………？」
紫耀「僕ですね！
……ところで、臭いとれました？一応リセッシュしてみたんですけどー…」
彼の言葉に、
カバンがドサリと手元から滑り落ちた。
紫耀「…？ どうかしました？」
「……、」
紫耀「え、なんて？」
「………か、」
紫耀「え、蚊！？ どこですか！？うわ、俺O型なんすよ！！」
「……帰ります。」
紫耀「あっ、ちょっと……！ｺﾞﾎｯ､」
落ちたままのカバンをバッと勢いよく拾い上げ、
シュッシュとリセッシュをあたりに振りまいて咳込む彼を他所に、カフェを飛び出した。
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「(蚊にリセッシュが効くわけないでしょ……！)」
それに今は例年より寒さの残る3月。
蚊などいる訳もない。
＿＿そしてなにより、なによりだ。
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「もうあのカフェに行けない…………。」
大きなため息をついて、近くのベンチで項垂れた。
カバンを少し開けると、今日と明日で読破しようとしてた『桜の栞』が顔を出す。
特に大好きな作家の、セレナさんの新作。
「……読みたい。」
家はやっすいボロアパート。
外の音がうるさくて集中出来ないし、なんとなく家では読みたくない。
仕事場で読むと時間を忘れたり、人の声が聞こえなくなるから無し。
…大通りのオシャレなカフェは、女子トークがうるさい。
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そんな私が、やっと見つけた丁度いいカフェだったのに。
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「(他のカフェ見つけるしかないかなあ……。)」
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本さえ読めればいい。
ただそれだけだ。
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あき。 - 新作公開、おめでとうございます。おかえりなさい！が合ってますか？笑 平野のイメージぴったりでやっぱり雪乃さんの描くお話は大好きです。引き続き雪乃さんのペースで更新がんばってくださいませ。 (2019年4月1日 18時) (
レス) id: 1e1b84a358 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪乃 | 作成日時：2019年4月1日 3時
