彼女と彼の誕生日の話 ページ43
「おいしかったねー！」
「う、うん」
「誕生日だって言ったらチャーシューおまけしてくれたしね。ラッキー！」
寒い体に染み渡るラーメンは確かにおいしかった。
安定のみんみん。
でも今日誕生日なのに！
クリスマスイブなのに！
チャーシューで喜んでていいの？
「あれ、雅紀くんどこ行くの？うちこっち…」
「こっちから行ってもいい？」
「いいけど、遠回りだよ」
「いいからいいから」
そこは閑静な住宅街を見下ろす高台の公園。
「わ……！」
家々がそれぞれ、壁や木にキラキラ光る装飾をつけているのがちょうどよく見えた。
「きれい……」
「ね？この間Aちゃんち行く時、見つけて。
イルミネーションだ！って思ってたの」
冷たかった雅紀くんの手は、ラーメンのおかげかぽかぽかあたたかい。
「Aちゃんと一緒に見たいなーって思ってたの」
「……ありがとう」
つないだ手の力が心なしか強くなった気がして雅紀くんを見上げると。
不意打ちで、キスされた。
「誰もいないから、こんなこともできちゃうしね」
そう言っていたずらっ子みたいに笑う雅紀くんを。
好きだって思う。
「雅紀くん」
「んー？」
「お誕生日、おめでとう」
私からもキスのお返し。
「……ありがと」
二人で私の家に帰って来て、玄関を入ったところで思い出した。
まずい！
今朝のおせんべケーキそのまま！
キッチンも散らかってる！
「雅紀く……ちょっと待って！」
「え？」
「わー！見ないで！」
でも雅紀くんの視線は、おせんべケーキにロックオン。
「去年花さんに教えてもらったとおりに作ったんだけど……ふくらまなくて」
「……」
「もー、不器用でやんなる。
今日ごめんね。何にもうまくできなかっ……」
びっくりするくらいの強さで、抱きしめられた。
「何時に起きたの？」
「え？」
「仕事の前、でしょ？何時に起きた？」
「……4時半」
雅紀くんの小さく吐いた息が首すじにかかる。
「何かしてくれるから、Aちゃんと一緒にいるわけじゃないよ」
少しかすれた雅紀くんの声。
「ラーメンでもAちゃんと食べたらどんなご馳走よりおいしいし。
住宅街の装飾もどんなイルミネーションよりきれいに見えるんだ」
「……うん」
「すっごくいい誕生日だよ」
優しく笑う雅紀くんを。
心の底から愛しいと思う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1353人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年12月16日 18時
