彼女と彼の誕生日の話 ページ41
「何ですか？」
松本さんがくるっと大野さんを後ろ向きにすると。
そこには、タキシードにふさわしくない見事なまでの寝癖。
「申し訳ないのですが、ちょっとそれなりにスタイリングしてもらえませんか」
「別に誰も見てねえよ、おれの髪なんか」
「ひどすぎるんだよ！」
時計をちらっと見ると17時半を過ぎたところ。
雅紀くんとの待ち合わせは18時半。
フレンチの予約は20時。
スタイリングくらいなら、全然問題ない。
「授賞式だって俺が迎えに行かなかったらすっぽかそうとしてたし」
松本さんが、相変わらず鋭い目で大野さんをじろっとにらむ。
「だって今日クリスマスイブじゃん」
「そうですけど！
お偉いさんも今日は来るからって前々から言ってましたよね」
「詩織にサンタのコスプレさせようと思って衣装買ったのにー」
「だー！もう！わかりましたよ！
二時間だけ我慢してくれたら帰っていいですから！」
相変わらずな二人のやり取りに笑いをかみ殺しながら、声をかけた。
「あの、髪なおしますよ。どうぞ」
「ごめんね、ありすちゃん。忙しいんじゃないの？」
「大丈夫ですよ」
松本さんには店内で待っていてもらい、手早く大野さんの髪をスタイリングした。
鏡にうつった大野さんは、固めた髪型のせいかさっきよりびしっとして見える。
「はい、どうぞ。授賞式頑張ってくださいね」
「ん。えらい人とよくわかんない世間話してくる」
「Aさん、すみません。助かりました」
松本さんがぺこりとお辞儀をする。
「ほら早く行きますよ！」
ずるずる引きずられるようにしながら大野さんが、またねー、とひらひら手を振った。
時計を見ると18時を過ぎてる。
急がなきゃ、と道具を片付けていると受け付けの女の子が泣きそうな顔で走って来た。
「Aさん」
「どうしたの？」
「予約がダブってて。今誰も手があいてないんです」
入口を見ると、明らかにイライラした様子のマダムが一人。
これ以上待たせるとクレームになるかもしれない。
「わかった、私が行く」
「すみません！」
カットだけなら間に合うはず。
祈るような気持ちで伺ってみる。
「今日はどういたしましょうか？」
「カットと、パーマもお願いしたいのよ」
「……かしこまりました」
絶望的展開。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1353人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年12月16日 18時
