彼とプロポーズの話 -side.N- ページ37
「古本屋の二号店にちょうどいいかなって思って買っといたの」
「うそ」
「でも、お前が世界一おいしいケーキ屋を、どうしてもそこで開きたいって言うなら。
売ってやってもいいよ」
「カズ…」
「あげるんじゃなくて売るんだかんね」
花が俺に抱きつく。
「ちょ…相葉さんが見てるでしょうが」
「見てない見てない！あ、俺、牛乳買って来るね、店閉めとくからよろしくー！」
「私ね、お店の名前もう決めてるの」
「へえ、なに？」
「Lundi」
「どういう意味？」
「フランス語で、月曜日って意味」
「……」
「由来聞かれたら、大切な人に会った大切な日です、って答えるね」
やべ、うれし。
「いつももらってばっかりだよ、カズに」
「そんなことないけど」
「私からもあげたい」
花が、ゆっくり体を離す。
「カズ、私を好きになってくれてありがとう。
私もカズが大好きだよ」
すうっと花が息を吸う。
「私と、けっ…」
「ちょっと待て！」
思わず手で花の口をふさぐ。
「俺の宙ぶらりんになったままのやつどうしてくれんのよ」
「ほんなの、はんへい…」
「だめ。俺に言わせろ」
花が、ぐうって体に力を入れた。
「俺と、結婚してください」
「……」
「あれ、返事は？」
「…へんひ、へきはい」
あ、そか。
口ふさいだまんまだった。
手を離すと、ぷはって息を吸う。
「返事、は？」
「…ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
「ふはは。古くない？」
「カズと結婚、したいです」
「…うん」
たかが紙切れ一枚の契約かもしれないけど。
こんなに、重みがあるんだな。
結婚すること。
家族になること。
こんなに、幸せなことなんだな。
「ねー、教えてよー」
クリスマスもお正月も過ぎて、いつもの日常に戻った「Siesta」で相葉さんがしつこく言う。
「プロポーズのシチュエーションと言葉！教えてよー」
「ぜってえ、やだ」
「減るもんじゃないしいいじゃん！」
「やだよ。
…あーでもさ。Aにプロポーズするから参考にするって言うならそん時教えてやるよ」
「えー？んじゃそれまで我慢しよっかな。
そんな先じゃないと思うしね」
「あっそ」
その時に。
俺がプロポーズしたのは「Siesta」でだよ、って言ったら。
あなたの大好きなこの店で、プロポーズしたんだよって言ったら。
どんな顔して笑うんだろ。
「彼とプロポーズの話」 ーおわりー
☆おまけのあとがき☆→←彼とプロポーズの話 -side.N-
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年12月16日 18時
