60.終わらない幸せ ページ26
みんなで目標を言い合ったあと、雅紀くんが翔くんに尋ねた。
「翔ちゃん先輩、いつ発つの？」
「年明けすぐだよ」
「何年くらい？」
「5年くらい、かな」
「けっこう長いんだ、寂しいね」
二人の会話を聞きながらアキと目が合った。
二度と会えない訳じゃないのは分かってるけどやっぱり寂しい。
「雅紀くん、Aのことよろしくね」
「うん！アキちゃんも、翔ちゃん先輩のことよろしくね」
「おーい、俺はよろしくされなくても大丈夫ですー」
「だって翔ちゃん先輩、仕事はできるけどデスクはきたないし、無理なスケジュールすぐ詰め込むし」
「お前だって大事なプレゼンの資料間違えてシュレッダーかけたことあったくせに！」
「でもアドリブでプレゼンして契約取ったじゃん」
サラリーマン時代の雅紀くんを想像して、笑みがこぼれる。
「部長は今だにその話してる。
俺もさ、正直雅紀戻ってこないかな？って思ってたんだけど。
今日来てみて無理だってわかったわ」
翔くんが、ぐるっと店を見渡す。
「いい店だな、ここ」
「そうでしょ？」
「うん、雅紀らしい店」
「帰って来たら、また来てね」
アキが口をはさむ。
「その前に、雅紀くんとAがドイツ来てよ！」
「あ、いいね！雅紀くん行こうよ」
「うん！行こう行こう」
翔くんがまるい目をくりん、とさせる。
「どうせなら新婚旅行で来れば？」
「それもいいけど。俺新婚旅行はやっぱりハワイがいいなー」
「ベタだな」
「いいじゃん」
その会話を聞いて、ニノくんがすかさず言う。
「なによ。相葉さんとAも結婚すんの？」
「すぐにじゃないよ。いつか、ね」
ニノくんが、くふふって笑う。
「A、頑張ってね？」
「え？何を？」
「相葉さんは、野球チーム作れるくらい子どもがたくさん欲しいって昔から言ってるよ」
「野球って…9人？！」
「でも女の子もほしいんだよねー。
Aちゃんに似たかわいい子」
まだ何も、決まってるわけじゃない。
でも、雅紀くんの頭の中で思い描く将来に。
私が当たり前みたいにいるんだな。
雅紀くんにだけ聞こえるように、私は言った。
「雅紀くん」
「ん？」
「私初めて思ったよ」
「何を？」
「終わらない幸せ、あるって」
きっと終わらない。
大切な場所があって
大切な人たちがいて
大好きな人が笑っていてくれたら
私の幸せは続いて、いく。
ーおわりー
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年12月16日 18時
