59.来年の目標 -side.A- ページ25
パーティはにぎやかだった。
人数は多くないけど、みんな楽しそうに笑ってて。
自分の店で自分の好きな人たちが楽しそうにしているのを見るのは、嬉しい。
「そういえば相葉さん、デザートいろいろ試してたのどうなったの？」
「んー…プリンはニノにまずいって言われたし。他もあんまりしっくりこなくて」
花ちゃんが遠慮がちに言う。
「私作ろうか？」
「え？！ほんとに？」
「オープンするお店、この近くなの。
カズの古本屋とここの間くらい」
「花ちゃんが作ってくれるなら、味は間違いないし！」
「当然。花が作るお菓子は世界一おいしい」
ニノがふふん、って笑ってる。
「ほんとにいいの？！」
「いいPRになるし、私こそ助かるよ」
「じゃあぜひお願いします！」
花ちゃんのお店がオープンしたら
ますます楽しくなりそうだな。
「ね、来年の目標みんなで言わない？」
花ちゃんが言う。
「じゃあ言い出しっぺのあなたから言いなさいよ」
「私？私は来年お店をオープンするから、たくさんのお客さまに来てもらえるように頑張る」
「ニノは？」
「俺？目標ってあんま意味なくない？
1年が終わったあとにいい1年だったな、って思えたらそれでいいかな」
「思うでしょ！だって来年は結婚するんだし。
翔ちゃん先輩は？」
「俺は…ドイツっていう新しい場所で。
与えられたことだけをするんじゃなくて常に挑戦し続けることかな」
「じゃあ私は、そんな翔を支えることかな」
アキちゃんが迷わず言う。
「Aちゃんは？」
「私は、スタイリストとして指名してもらえるように頑張ること。
それと…」
「それと？」
「言葉で伝える努力をする」
うん、俺もそうする。
「雅紀くんは？」
「俺は…『Siesta』に来てくれたお客さんを笑顔にすることと」
少し前から考えていたことを言ってみる。
「だいぶ軌道にのったし、火曜日を定休日にしようかなって思ってて」
「そうなの⁈」
火曜日は、Aちゃんの美容室も定休日。
「うん。だから、いっぱいいろんなとこ一緒に行こうね」
Aちゃんが頷いて、嬉しそうに目を細める。
「目標つーか、ただのノロケに聞こえるんですけど」
ニノが口をとがらせて、でもどこか優しい口調で言った。
いっぱいいろんなとこ一緒に行こう。
いっぱいいろんなもの一緒に見よう。
ゆっくりでも
迷っても
遠まわりでも、いいんだ。
一緒に、いよう。
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年12月16日 18時
