57.プレゼント ページ23
「ごめんね、楽しそうなとこ」
ふにゃん、と笑うと看板を差し出した。
「もしかして！できたんですか⁈」
「うん」
みんなで一斉にハの字に立てられた看板を見る。
白地にSiesta、と緑のペンキで書かれた下には、コーヒーやホットドッグなんかのランチタイムのメニューや値段が書いてあって。
一番下には、私が初めてこの店に来た時見たような。
腕を枕にして眠る雅紀くんの、絵。
「え？これ、俺？」
「そう。『Siesta』って昼寝って意味なんでしょ？」
「すっげ…」
雅紀くんが感動して声につまってる。
と、その時ニノくんがひょいっと裏面を見て、ふはって笑った。
「A。お前一生この店に通い続けなきゃだめだわ」
「え？どういうこと？」
意味がわからなくて、雅紀くんと一緒に裏面を見る。
そこには、ビールやお酒やおつまみなんかの夜に出すメニューと値段が書いてあって。
その下には。
「Siesta」に向かって路地を走る、女の子の絵。
これ、もしかして。
「私…ですか？」
「そうだよ、ありすちゃん」
大野さんが、当然と言わんばかりに頷く。
どうしよう。
すごく、嬉しい。
「お客さんにさ、あの女の子モデルいるんですか？って聞かれた時に。
いるよ、っていつでも言えるようにね？」
ニノくんが笑う。
「大丈夫だよ」
雅紀くんが、私を見て言う。
「俺たち、ずっと一緒にいるから」
私はなんだかもう胸がいっぱいで。
涙をこらえるのに必死だった。
「よかったね、A」
私の腕をとってそう言ったアキの目にも、涙がにじんでて。
私はもう何度目かわからない、めまいがするような幸せを、また感じた。
「よかったら、大野さんも飲んで行きませんか？」
雅紀くんが誘ったけど大野さんは、ふるふる首を振った。
「ありがと。でも今日はクリスマスイブ、でしょ？」
「はい」
「一番大切な人と過ごす日、だよね」
そう言って、ふにゃんと笑うと。
じゃあね、メリークリスマス、と言って大野さんは出て行った。
「すっごいクリスマスプレゼントもらっちゃった！」
雅紀くんが嬉しそうで。
私も、嬉しい。
目が合ったから笑うと。
雅紀くんもお日さまみたいに、笑った。
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年12月16日 18時
