37.決断 -side.A- ページ3
Aちゃんとはあれから会えていなくて。
電話で「この間はごめんね」って謝ったら。
「ううん、私もごめんなさい。
あ、ねえ翔くんとアキ24日来れるって言ってたよ！」
元気な声が返ってきて。
ニノは深刻に考えてるかも、って言ってたけど
大丈夫そうだなって思った。
「ニノと花ちゃんもオッケーだって、24日」
「楽しみだね」
「うん。仕事はどう？忙しいの？」
「そうだね、毎年この時期はバタバタするの。
早く帰れる日があったら『Siesta』寄るね」
「うん、待ってるね」
ニノに言われたからじゃないけど。
一つ、決めたことがあった。
金曜日、やっとマキちゃんが出勤してきた。
「今日閉店まで残れる？」
「もちろん！いいですよ」
マキちゃんは忙しいから残業を頼まれたと思ったみたいだったけど。
特に否定はしなかった。
変に話があるからって言うと、逃げられそうな気がしたから。
実際その日は忙しくて、閉店近くまでお客さんが途切れることはなかった。
最後のお客さんが帰ったあと、テーブルを片付けてくれているマキちゃんに近づく。
「マキちゃん、あのね」
「はい？」
「マキちゃんが俺に好意を持ってくれていることは嬉しいよ。
嬉しいんだけど、そのことが俺の大事な人を不安にさせてるみたいで」
「……」
「残念だけど、これ以上一緒に働くのは無理だよ」
「…クビってことですか？」
俺は目をそらさないで、頷いた。
「仕事はよくやってくれていたから、申し訳ないけど」
「…嫌です」
俺の声を遮るように小さくつぶやいたマキちゃんが。
突然どん、と小柄な体をぶつけてきて。
反射的に抱きしめるような格好になった。
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年12月16日 18時
