54.真夜中のケーキ ページ20
今、夜中の2時半。
雅紀くんは隣ですやすや眠ってる。
起こさないように、ゆっくり起き上がる。
そうっとそうっと。
床に散らばった服をかき集めて、とりあえず服を着る。
さっき、雅紀くんの腕の中で私は大変なことを思い出した。
雅紀くんの誕生日ということは。
今日は24日。
仕事が終わったらみんなでパーティ。
それなのに。
ケーキ、作ってない！
しかもまさかこんな展開になると思わなかったから、雅紀くんがうちにいる！
材料は買ってあったから、こっそり作るしかない。
起きませんように、と祈りながら、まずはスポンジケーキを作る。
花さんに教えてもらったことを注意深く思い出しながら。
丁寧に粉をふるって、卵とバターと砂糖を混ぜる。
おいしくできますように。
喜んでもらえますように。
オーブンにいれると、知らないうちにうとうとしていて、焼き上がりを知らせるピーって言う電子音で、はっと目が覚めた。
慌てて見ると、花さんと一緒に作った時ほどではなかったけど、一応ふくらんでいてほっとする。
生クリームを平に塗って。
後は苺やラズベリーやブルーベリーを飾るだけ。
「Aちゃん？何してるの？」
飾るだけ、だったのに。
雅紀くんが、ぴょこんと寝ぐせをつけたまま
不思議そうにこっちを見ていた。
「あと少しだったのに…」
「え？何？」
雅紀くんがスタスタ歩いてきて、のぞきこむ。
「ケーキ？
…もしかして俺の？」
「もしかしなくても雅紀くんのだけど」
「…どうしよう」
「え？どうかした？」
「嬉しい。ありがとう」
後ろから、きゅって抱きしめられた。
「おいしいかわからないよ？」
「おいしいよ」
だといいけど。
雅紀くんのさらさらの髪が、首すじに当たってくすぐったい。
「Aちゃん、俺はいなくならないよ」
「…うん」
「終わらない幸せもあるよ」
雅紀くんの少しかすれた声が。
私の心にじんわり染みる。
「絶対に、ある」
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年12月16日 18時
