47.なんで ページ13
「ずっと思ってたんだけど、さ。
Aちゃんすぐ言いたいこと飲み込むよね」
「……」
「なんで？俺そんな頼りない？」
そうじゃない。
そうじゃないけど。
「…見ちゃったの。マキちゃんを抱きしめてるとこ」
「え？マキちゃんを？」
「昨日の夜Siestaで。抱きしめてたでしょ？」
雅紀くんは眉間にシワを寄せて、考えていたけど思い当たることがあったみたいで、あ！と小さく声を上げた。
「あれ、見てたの？」
「うん…」
「それなのに今まで黙ってたの？」
雅紀くんの口調が強くなる。
「気になるなら聞けばいいじゃん。
言っとくけど、やましいこと何もないから」
「私だって、やましいことないよ」
雅紀くんが、はあってため息をついて目を伏せた。
「…じゃあなんで嘘つくんだよ」
「嘘？」
「Aちゃん、俺が貸したストールどうしたの？」
え？
ストール？
ストールは、昨日返そうと思って持って行って。
それからどうしたっけ？
村上さんの家に行って。
帰る時…手に持って、なかった。
「答えられないの？」
雅紀くんの顔が見られない。
「村上さんの家に行った？」
何を言っても、嘘っぽく聞こえる気がした。
二人で会ってないって言っておいて。
実は部屋に上がったのに。
何もしてないよ、信じて、って？
雅紀くんのかすれた声が、頭の上で響く。
「何か言ってよ…」
重苦しい沈黙が何分か続いたあと。
「…帰るね」
雅紀くんが立ち上がって、部屋を出て行く音がする。
嫌だ。
行かないで。
嫌だ。
壊したくなかったのに。
なんで。
うまくいかないんだろう。
一人になっても、私は顔を上げられずに。
ぽたり、ぽたり、と涙が落ちて、スカートにまるいシミを作るのを。
どこか他人事のように、見ていた。
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年12月16日 18時
