36.難しくない ページ2
翔くんはうーん、と眉間にシワを寄せて考えてる。
「ドイツに行くって話をもらった時、単純に離れたくないって思ったんだよね。
元々結婚は考えてたし」
「そうなの⁈」
「なんでお前がびっくりすんの」
「ドイツ行くから急に考えたのかと思ってた」
翔くんはビールの泡が消えていくのを眺めながら言った。
「日常の積み重ね、かな」
「え？」
「さっきの、Aちゃんの質問に対する俺の答え」
「どうしたらずっと一緒にいたいって思ってもらえるかっていうの？」
「そう。ま、俺の場合はだけど」
「うん」
「付き合ってても、別にドラマみたいなことがしょっちゅう起こる訳じゃないよね？」
確かに。
私が頷くと、にっこり笑って翔くんは続ける。
「おいしいもの一緒に食べたり、今日あったこと聞いたり話したり。
そういう何でもない日常が積み重なって、お互いがかけがえのない存在になるんじゃない？」
「そっか…難しくないんだね」
「うん、難しくないよ」
アキの目がちょっと潤んでる気がするのは、気のせいかな。
そんなアキの肩をちょんとつつく。
「アキ、聞いた？」
「聞いた」
翔くんが、胸を張る。
「惚れ直したか？」
「直さなくても惚れてます」
「……」
「ちょっと赤くなんないでよ！私が恥ずかしいでしょ！」
「ちげーよ！酔っぱらったの！」
私は笑いながら立ち上がる。
「ごちそうさま。続きは二人でごゆっくり」
玄関まで見送りに来てくれた二人に笑顔を向ける。
「今日はありがとう」
「なんかあったらいつでも言ってね」
「うん、そうする」
「雅紀は裏表ないし、誠実だから。
あのままのあいつを見てやって」
「うん、そうだよね」
「あー、俺今日かなり雅紀のこと褒めたおしたよな？今度おごれって言っといて」
「あ！そうだ、忘れてた。24日、Siestaでクリスマスパーティするんだけど二人も来れる？」
「何それ、楽しそう！翔も行ける？」
「マッハで仕事片付ける！」
二人に手を振って、駅までの道をぶらぶら歩き出す。
難しくないんだ。
きっと大丈夫だよね。
私はふと思いついたことがあってニノくんに
電話をかけた。
「もしもしー？」
「ニノくんお願いがあるんだけど」
「珍しいじゃない。どうしたの」
「花さんの連絡先教えてもらえない？」
「いいけど…なんで？」
「ケーキの作り方教えてもらおうと思って」
「ケーキ？」
「雅紀くんの、誕生日ケーキ」
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年12月16日 18時
