35.夫婦な二人 ページ1
「仕事帰りでもいいから、うちで鍋しない？」
ってアキが誘ってくれて。
もやもやした気持ちが続いていた私は、二つ返事で行くことにした。
仕事をなるべく早く切り上げて、ワインを手土産にアキの家に向かう。
「いらっしゃい」
出迎えてくれたアキの笑顔を見ると、なんだか泣けてきた。
「ちょっと、どうしたの？」
翔くんも中から顔をのぞかせる。
「アキとりあえず入ってもらったら？寒いし」
部屋の中はあったかくて、お鍋の出汁のいいにおいがしている。
「先食べよっか、あったまったら落ち着くよ。
俺ビール取ってくる」
「そうしよう。A、座って」
アキが手際よく鶏肉やつみれを鍋にいれ少し火が通ってから、白菜や人参やネギや豆腐を入れる。
いいタイミングで翔くんがグラスにビールを入れて戻ってきた。
思わず笑みがこぼれる。
「すごいね、さすが夫婦だね。
息ぴったり」
翔くんとアキが顔を見合わせる。
「よかったね、旦那さま」
「光栄ですね、奥さま」
また息ぴったりに言い合う二人。
乾杯、とグラスを合わせてビールを一口。
熱々の水炊きを、はふはふ言いながら食べる。
タレはごまだれと大根おろしにポン酢の二つ。
「おいしい！」
私が言うとアキがほっとしたように、笑う。
「で？何があったの？」
優しい声でアキに聞かれて。
私は一口ビールを飲むと、この間の雅紀くんとの車の中でのやり取りを、かいつまんで二人に話した。
「うーん、別にそこまで気にすることじゃないと思うけどな」
話を聞き終えたアキがお箸を置いて言った。
「ちょっと言い合いになることくらい、しょっちゅうあるし。
それでいちいち別れを考えてたらAがしんどいよ」
「そうなのかな…」
翔くんがビールを私のグラスに注ぎ足してくれながら言う。
「大丈夫だよ。雅紀はいいかげんなやつじゃないから。
もっと寄りかかってもいいんじゃない？」
「…雅紀くんは大事にしてくれてる。
私の問題だって、わかってるんだけど」
私は前から聞いてみたかったことを聞いてみた。
「どうしたらずっと一緒にいたいって思ってもらえるのかな。
二人はどうして結婚しようと思ったの？」
「あ！私も聞きたい！翔答えてよ」
「…なんで俺」
「いいじゃん！なかなかそんなこと聞けないし」
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年12月16日 18時
