8.大阪から来た人 ページ8
私が働いている美容室は、毎朝開店前にミーティングがある。
今日のミーティングに知らない顔があった。
若干たれ目の、30歳くらいの男の人。
「はい、みんな聞いて。年明け、この『LITTLE』が大阪に1店舗新しくオープンすることになった」
へえ、そうなんだ。
今まで都内にしか展開してなかったのに。
店長の言葉にみんなもざわざわ。
「その新しい梅田店の店長である村上くんだ。
今日から年末までうちで研修を兼ねて働いてもらうことになった」
村上、と呼ばれた男性が人懐っこそうな笑顔を向ける。
「初めまして、村上です。東京の人は冷たいって大阪では言われてて。めっちゃびびってるんで優しくしたってください」
みんなクスクス笑う。
「じゃあ、A。お前、村上のアシスタントついてやって」
急に名前を呼ばれて、慌てて返事をした。
「あ、はい」
私は、スタイリストとして髪を切ることもあるけれど、まだ指名してくれるお客様は少ないので手が空いている時はアシスタントにつく。
今日は特に指名は入ってなかった。
けど、誰も指名がないお客様が2名来られるから、どちらか一人は切らせてもらえるかもって思ってたんだけどな。
当然のように、その2名は村上さんが切ることになった。
その後、今日来られるお客様の注意点と休憩を回す順番などを告げられ、ミーティングは終了した。
村上さんが近づいてくる。
「名前Aって言うん？よろしく」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「固い」
「は？」
「スマイル、スマイル。女は愛嬌やで」
関西の人ってみんなこんなにフランクなの？
とりあえず、引きつった笑顔を浮かべてみる。
ぶふって吹き出す村上さん。
「な、何ですか？」
「いや…なんか今のでお前がどんなやつか、なんとなく分かったわ」
私にはさっぱり分かりませんけど。
ずっと私がアシスタントつくのかな?
ちょっと憂うつ。
なんて思っていたら。
「さっきちらっと聞いてんけど、もうスタイリストなんやろ？一人切るか？」
って言ってくれた。
「いえ、店長が決めたことですから」
「そーか？そしたらよろしく」
やっぱり店長任されるだけあって、実は気配りができる人なのかも。
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年11月27日 20時
