24.違うよ ページ24
いつもと同じカウンターに座ると、必然的に村上さんの隣になった。
村上さんが、私とニノくんを見る。
「なんや、デートか」
「え？」
「なるほどー、確かにええ男やな。『私にはもった…』」
「わー！何言ってるんですか！」
ほら、やっぱり！
「照れんなや」
「照れてません！」
だいたいニノくんじゃないし！
ひじで小突いてくるのを、よけていたら、奥からマキちゃんが出て来た。
店では白いシャツに黒いパンツだけど、真っ赤なショート丈のコートとデニムのロングスカートがよく似合っていてかわいい。
「店長、じゃあお先に失礼しまーす」
「あ、うん。お疲れさま、気をつけて」
「そうだ。デザートの試作、私も考えてみてもいいですか？」
「ほんとに？お願いしよっかな」
「実は、ちょっと思い浮かんでて」
マキちゃんが雅紀くんの耳元に顔を近づけて、
何かささやく。
近いよ。
デザート考えてるなんて、私知らないし。
思わず下を向く。
村上さんが、不思議そうな顔をしたのがちらっと見えた。
「相葉さん、早くビール」
「あ、ごめん。Aちゃんは？梅酒ソーダ？」
「うん」
マキちゃんが私とニノくんに気づいて、元気な声で言った。
「いらっしゃいませ！お二人いつも仲良しでうらやましいです」
「どいつもこいつも。ちが…」
「違うよ」
ニノくんの声を遮った、雅紀くんの穏やかだけどはっきり通る声。
「俺の」
マキちゃんがきょとんとした顔で、雅紀くんを見る。
「Aちゃんは、ニノの、じゃなくて。
俺の、トクベツな人」
私が思わず顔を上げると、雅紀くんの視線は私の方を向いていた。
「ええ⁈そうだったんですか？」
マキちゃんが目をまるくして、私と雅紀くんを交互に見た。
「そうだよ。ね？」
「…はい」
村上さんが、ふうん、とつぶやいて腕を組んだ。
マキちゃんは、ごゆっくりどうぞ、って言って帰って行ったけど。
なんとなく元気がなくなったような気がして。
やっぱり雅紀くんのこと好きなんじゃないのかな?っていう気がした。
女のカン。
「なるほどなー」
村上さんが、横でぶつぶつつぶやいている。
「…なんですか」
「いや、なんでもない。俺も行くわ。A、また明日な」
「はい、お疲れさまです」
村上さんが出て行くと。
ニノくんが小さなため息をついた。
「やっと静かになった」
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年11月27日 20時
