18.指摘 ページ18
昨日は雅紀くん、嬉しそうだったな。
まさか大野さんが看板に絵、描いてくれるなんて。
お昼休み。
そんなことを思いながら、バックルームで作ってきたサンドイッチを食べていると、村上さんがコンビニの袋を下げて入って来た。
「お、偉いやん。作って来てんの？
意外やな、料理できるんや」
「別に得意じゃないですけど。節約できるから」
「彼氏にも作ってあげんの？」
「……いえ、作ったことないです」
「なんで？」
「なんで、って。いろいろ考えちゃって」
「いろいろ？」
「勝手に台所使ってもいいのかな、とか」
「なんやそれ…めんどくさいやつやなあ」
ぐさり。
「手料理喜ばへん男なんかおらんやろ」
「…いますよ」
「え？」
「前に付き合ってた人は、喜びませんでした」
村上さんが眉をひそめる。
「お前…見る目ないやろ」
「…あんまりないです」
「今の彼氏も大丈夫なんか？悪いやつとちゃう？」
「違いますよ！今付き合っている人は、私にはもったいないくらいの人なんです！」
「ほんまかなー」
「ほんまです！」
「らっぶらぶなんや？」
「…らっぶらぶです」
「今間があった！」
「ないです！」
村上さんはもう一度、ほんまかなーって言いながら、おにぎりをフィルムからはずして、食べはじめた。
「なんかお前ってアンバランスよなあ。
どっか危なっかしい」
「え？」
「器用そうに見えて不器用。
ポジティブに見えてネガティブ。
気が強そうに見えて繊細でもろい」
「……」
「ちゃうか？」
当たってる、ような気もする。
「そんな女…めんどくさいですよね？」
「ほら、また。ネガティブー」
変なこと、口走っちゃった。
サンドイッチを食べ終えた私は、立ち上がるとバックルームを出ようとした。
「そうでもないで」
「え？」
「そういうやつが、危なっかしくて目が離せへん、って思うやつもおる」
村上さんが、おにぎりをもぐもぐしながら言う。
「まあ、だいたいの男はめんどくさいやろな。
お前の彼氏はどっちか知らんけど」
雅紀くんは優しいからめんどくさい、とは言わないだろうけど。
そんな風に思われたくないから、ジタバタしてる。
雅紀くんと付き合って。
もうすぐ3か月。
何事もなく過ぎて、あれこれ心配していることが笑い話になるくらい。
二人でいることが当たり前になればいいのに。
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年11月27日 20時
