16.ありすちゃん ページ16
「あ、えっと、いらっしゃいませ！」
雅紀くんが我に返ったように言う。
「お二人そろって来られたってことは…今日は逃げてないんですね？」
大野さんが、ふにゃんと笑って頷く。
「うん。今日はね、締め切り終わったばっかなんだ」
ニノくんが、はっとして言う。
「もしかして！ヤマカゼ…」
松本さんが長い指を唇に当てて、しーって言いながら、店内を見渡す。
今日は他にも2組のお客さんがいた。
「…サトシ、先生？」
ひそひそ声になったニノくんが、確認する。
そうか、ニノくん会うの初めてなんだ。
「うん、そう」
「…すっげ。俺、ずっと読んでます『Attack it !』」
「ありがと」
雅紀くんが、お好きなお席どうぞ、って言ったら大野さんはぐるっと店内を見渡して、私に目を留めた。
「あ、いた。ありすちゃん」
「…は？」
「おれ、ありすちゃんの隣がいい」
ありすちゃん？
訳がわからないまま、大野さんは私の横に座り、松本さんはその隣に座った。
「さっきさあ、見かけたの。
そこの路地んとこで」
「私、ですか？」
「そう。走ってたでしょ？
不思議の国のアリスみたいだなって思って」
松本さんがちょっと苦笑い。
「そういう意味だったんですか。突然『あ、ありすちゃん』って言うから、お知り合いかと」
「んふふ、前に1回会ったよね？
マスターの奥さんに見せかけた常連さん」
「あ…はい」
覚えてもらえていたことが、なんだか嬉しい。
「奥さんじゃないんですけど、実は彼女になったんですよー」
「えー？そうなのー！」
雅紀くんが、さらっと言った言葉に私はまたどきどきしてる。
ニノくんが横でぷくく、って笑った。
「不思議の国のアリス、ね。
俺はAが副業でキャバ嬢でもやってんのかと思ったわ、ね？相葉さん？」
「お、思ってないよ！」
なんか動揺してるし…
「なんで走ってたの？」
ニノくんが不思議そうに聞く。
「なんで…って。早く行きたくて」
私の言葉を聞いた大野さんが、ふんわり笑う。
「うん、やっぱり。ありすちゃん、だね」
「なんかアナタが言うとえろく聞こえるんですよね」
「え？そお？」
初対面でも、相手が憧れの漫画家でも。
…ニノくんはニノくんだな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 992人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年11月27日 20時
