露西亜人形殺人事件（26page） ページ1
「はぁ…っ、はぁ…っ！」
「ちょっと、アンタ大丈夫！？一体どうしたっていうのよ！？」
みんなが部屋を出た後、それまで遺体を演じていた梅園さんが胸元を抑えて苦しむ私の異変に気付く。
直ぐに梅園さんと刺されたフリをしていた犬飼くん、高遠遙一が様子のおかしい私の元に集まってきた。
返事をしようとしても、上手く呼吸ができない。
冷や汗が止まらなかった。動悸が耳元で激しく聞こえて、うるさい。
そのまま立っていられず、体のバランスが崩れてその場に倒れそうになったが、すかさずそれを高遠遙一が支える。
「PTSD…ですか」
「何それ！？」
冷静に分析した高遠遙一が呟く。
聞き慣れない単語に、梅園さんと犬飼くんは戸惑っていた。
「心的外傷後ストレス障害の略ですよ。彼女は幼い頃に両親を殺された光景が今のマジックショーと重なってフラッシュバックを起こしてしまったんでしょうね。おそらく、私が犬飼くんを刺したフリをした時に…」
どこで得た情報か知らないが、今はそんなことを考えてる余裕は私にはなかった。
胸元を抑えて、息がしづらい私を見て高遠遙一が呼びかける。
「ゆっくり息をしてください」
彼の指示に従って呼吸をゆっくりしようとするが、中々それができない。
すると、それに気付いた高遠遙一は…。
「まぁ！」
「ちょっと、何やってるんですか！ローゼスさん！」
急に高遠遙一の顔が一気に近づいたと思ったら、口を口で塞がれたのだ。
その行動には私も、見ていた梅園さんと犬飼くんも驚きを隠せない。
だが、高遠遙一はそんな私たちに構わず冷静に告げる。
「私に合わせて呼吸して」
梅園さんたちに見られていることもそうだが、彼が私の口を口で塞いでは離れてまた口を塞いでくる行為に段々と恥ずかしくなってくる。
抵抗したくても、体がグッタリしているせいか叶わなかった。
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作者名：紫亜 | 作成日時：2024年3月24日 2時
