とあるキバナさんのお話【ポケモン剣盾】 (ページ6)

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6話ページ6

それからAが成長していくのに、そう時間はかからなかった。

各シティのジムリーダーを倒してバッジを獲得する度に、アーマーガアに乗って俺のところに報告しに来る姿が、堪らなく可愛いと思った。

「キバナさん見てくださいっ！ネズさんに勝ちました！ついにキバナさんと対戦ですねっ」

そんな彼女が、怖いとさえ思った。

自分より幾つも歳下で、つい最近トレーナーになった少女から受ける、下からの圧。

不安、焦り。

あの時の俺は、Aを『憎い』『邪魔だ』とすら思っていた。

けれども、そんな俺をAは心から信頼し、慕ってくれていた。

そんな彼女を無下にもできなかった。

「お前の挑戦、楽しみに待ってるからな！」

これが精一杯だった。

ジム戦当日、彼女の姿を見てハッとした。

「おま…、どうしたその傷…？」

「えへへ…、バトルの前にちょっと特訓をと思って、昨日の夜からワイルドエリアを走り回ってたんです」

ああ…、俺は何を思っていた？
何を、考えていた……？

この子はこんな小さな背中に色んなモン背負って、俺に勝つために時間も惜しまず努力して。

「私、絶対絶対、キバナさんに勝ちますから…！」

期待、憧れ、未来への光…

Aの瞳にはこれしか映っていない。

それなのに、俺は…

「……ハハッ、全力で相手になってやるよ」

なんだか全て吹っ切れた。

もちろん意図してはいないだろうが、俺は彼女に救われた。

その後のバトルは、今まで経験してきた中でも1番と言えるほど楽しく、熱いものだった。

結果は、俺の負け。

それでも何か、清々しい気分だった。

「やっぱつえーな、お前は」

「そ、そんな…キバナさんだって…」

頬を赤くしながら答えるAに、少しだけ胸が鳴ったのを覚えてる。

思えばこん時から、俺はAを意識していたのかもしれない。