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肆拾漆行目 ページ13

「乱歩さんが一番浮かれてるから」

潤一郎くんが指さす先、乱歩先生は先程買ってきたであろう駄菓子を鏡花ちゃんに見せている

ゴソゴソと早速袋を開き始める鏡花ちゃんはどことなく楽しげだ

器に粉を入れ、混ぜ始めた鏡花ちゃんの横で、乱歩先生は棒のスナック菓子をくわえている

僕はお茶を飲みながらその光景を眺めていた


………小学生みたい

おじいちゃんになったような気分だ

「抑々 どうして彼女が探偵社に?」

モゾモゾと2人の様子を一緒に眺めていた敦くんが怪訝な顔で潤一郎くんに問い掛けた瞬間

ガチャりと音を立てて社長室の扉が開いた

ぬっと現れたのは諭吉先生

「私が呼んだ」

敦くんは肩をビクッと跳ねさせ、勢いよく後ろを向いた

そんなに驚かなくてもいいのに……

「社長 この娘が昨日報告した…」
「軍警と市警の動向(うごき)は?」

敦くんの後ろから報告をする国木田さんの言葉を遮り、諭吉先生はそう聞いた

諭吉先生の表情はいつもと変わらず冷静だ

「既に複数の隊が検分を始めています マフィアの隠蔽の甲斐あってか、身元までは割れていませんが……」

「指名手配は時間の問題か」

チャッと眼鏡を押し上げながら、国木田さんは諭吉先生に報告を告げる

走行中の列車の爆発事件はかなり大規模で、軍警、市警共に犯人を突き止めるべく動き始めていた

爆弾を所持していたのは鏡花ちゃんともう1人

共にマフィアだとは聞いていたけれど……

「身元引受け人が居れば別だが」

諭吉先生は静かな表情で、小さな彼女をそっと見やった

鏡花ちゃんの顔に影がさす

「此処に置いて下さい」

『……!』


顔を上げた鏡花ちゃんの瞳は真っ直ぐ諭吉先生の顔に刃を突きつけていた

芯の通った鋭い宝石のようなその瞳は一瞬も揺れない

揺れたのは敦くんのだった

ガタッと音を立てて立ち上がり、顔に動揺を浮かべて声を上げた

その声を遮るように彼女は言葉を連ねる

「何でもします」

「でも…そんな簡単には」

「止めておけ」

低い国木田さんの声が敦くんの声を押し潰し、彼女に矛先を向ける

国木田さんは真剣だった

「元マフィアだからではない 仕事が無い訳でもない だが止めておけ」

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名無し83958号(プロフ) - すっごく面白いです!更新を今か今かと待ち望んでます。頑張って下さい! (2020年4月28日 19時) (レス) id: 4a83a3e4ca (このIDを非表示/違反報告)
雨宮碧音(プロフ) - 虚さん» コメントありがとうございます!近々再び更新を再開する予定なので気長に待っていただければ幸いです! (2019年9月19日 18時) (レス) id: e732f79f93 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - え、なんこれドチャクソ好きです。更新頑張ってください! (2019年9月19日 17時) (レス) id: 7c0e52b0b9 (このIDを非表示/違反報告)
雨宮碧音(プロフ) - クロッキーさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです…!頑張ります! (2019年5月27日 15時) (レス) id: e732f79f93 (このIDを非表示/違反報告)
クロッキー(プロフ) - めちゃくちゃ好きです………!更新頑張って下さい! (2019年5月27日 12時) (レス) id: 3248997e70 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雨宮碧音
作成日時:2018年9月21日 1時

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