episode 1-19 ページ20
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佐那が席へ座らせると、ピエールが厨房からケーキを持ってきた。
ピエール「お待たせ致しました。」
彼女の目の前に置かれたそのオリージェンはホールになっていてロウソクまでさされていた。
ピエール「オリージェンでございます。」
佐那「おめでとうございます。但馬 茜様。」
彼女はケーキを見つめて少し微笑んだ後、口を開いた。
茜「…あの日、ここで誕生日を祝ってもらったんです。
丁度この席で…。
お母さんとお父さんと3人で美味しい美味しいって言って食べて…。
それから半年後でした。両親が事故で亡くなったのは…。
あの…総支配人さんは?」
佐那「私です。」
彼女は顔を上げて佐那に聞いたが、思っていたのとは違う返答が返ってきて驚いた表情を見せた。
茜「えっ?
あの…私が知っているのは桜井剛さんという方で…。
私の両親のことを知って毎年手紙のやり取りをさせていただく…」
佐那「父です。5か月前に亡くなりました。
よろしければ、私が送らせていただきます。これからは。」
佐那がそう言うと彼女はまた微笑んだ。
茜「ありがとうございます…。」
すると奥から大田原と長吉がバースデーソングを歌いながら出てくる。
ピエールと佐那もそれに混じり手拍子をしながら歌い始めた。
歌い終われば、尚美が出てきてパアン!というのと同時にクラッカーを鳴らした。
気づけば周りには桜がヒラヒラと舞っていた。
茜「同じだ…。」
彼女がそう呟くと、次にピエールが口を開いた。
ピエール「お誕生日、そしてご入学、おめでとうございます。」
佐那「お礼状に書いて頂いておりました。
9年前当ホテルのスタッフが、お誕生日と一緒に、小学校のご入学をお祝いをさせていただきました。
ので、その頃と同じように。」
ピエール「今年の四月からですよね、高校生になられたの。」
茜「やっぱりお父さんが言ってた通りだ…。
いっつもこのホテルのこと自慢していたんです。
まるで家族のようにしてくれるって、暖かく迎えてくれるって。高校生になったので、もう1回家族に会いたいと思って来たんです。
このケーキを食べて、勇気を貰おうって。
私の事、こんなにも考えてくださって、本当にありがとうございます。」
涙を流しながら彼女は話した。
その光景を影で見ていた牧田も感極まり涙を流し、後日、このことを記事に書いていた。
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× 睡眠薬 ×(プロフ) - みかさん» よかった、ありがとうございますっ…! (2019年3月10日 18時) (レス) id: a84cda8c74 (このIDを非表示/違反報告)
みか - あまり覚えていないので、新鮮です (2019年3月9日 18時) (レス) id: d21590aa14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:睡眠薬 | 作成日時:2019年3月6日 14時