6、アジの煮付け ページ7
紅奈は箸を使って器用に魚の骨を取りながらぼやく。
「そのデータをなんでよりによって兄松どもに渡すんだよ、こいつら嫉妬モンスターってわかってんだろ?それに、渡したところでトド松にメリットなくない?」
「だってお金になるんだもん」
(売ってんのかよ…)
紅奈の顔が引き攣る。
売るのもやばいが買うお前らもお前らだよ…
「…もういいから食べなよ、ご飯冷めちゃうよ?」
チョロ松があさりの味噌汁をすすりながら呆れたように言った。
「これあたしが作ったんですが。
何当たり前のように食ってるんですか?」
「おう!今日のディナーも最高だぜマイハニー!」
「味の玉手箱やー!!」
「アジ、だけにね」
カラ松、十四松そして一松はケタケタと笑いながら白米を頬張った。
「…喜んでいただけて幸いです」
紅奈は、何かを諦めたようだ。
「でもこれ結構良くない?
俺達が食材を買ってきて、紅奈が作る。
win-win(ウィンウィン)じゃん!」
「そうだな、家に帰ると何故か鍵が開いている。
中に入るとスーパーの袋と見飽きた顔の奴が『今日はアジの煮付けでよろ〜☆』とか言って待ってなければwin-winだな」
紅奈は酷く疲れたような顔で海苔の佃煮をご飯の上に乗せる。
「え〜!家で誰かが待ってるって…
嬉しくない?」
「黙れ小僧っ!
お前にあの恐怖がわかるのか?」
ただでさえ瞳が大きい目をくわっと思いっきり開くので迫力が凄い。
「鍵を渡してもいないのに勝手に中に入られてるというこの恐怖が…
…ん?おかしくない?なんで鍵持ってんの?」
「え?作ったんだよ、人数分」
「なんでだよ!いつそんな業者」
「一松と十四松が」
「いやお前らかよ逆にすげーな。
その能力をもっといいことに使ってくれ」
怒ってもキリがないと分かったのだろう。
紅奈も黙々とご飯を食べ始めた。
「ん、煮付けうま。あたし天才じゃん」
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:枢灵 | 作成日時:2017年11月19日 18時