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第5幕 悪い子(良い子) ページ7

白く清潔な病室にペンを走らせる音だけが響く

作りかけの戯曲を完成させたかった
誰が演じるわけでもない
誰のものでもない名もなき曲

今、私は最高の気分だった
幼馴染みの約束から解放されたかった私は天にも昇る気分だった

え?幼馴染みが嫌いなのかって?
まさか!今でも大事だと思ってるよ!

ただ、正直さ、私の年齢を計算するとね、
年の差がね…
だからね、もう、中身がね、ゴニョゴニョだから
遠くから見守りたいのね、うん
それに少し疲れたんだ
周りの羨望、嫉妬、憧憬、恋情
全てをリセットしたかった



部屋の外からパタパタと誰かが来る音がした

「A姉さん!」
『い、樹。せめてノックを…。』
樹はツカツカと私の前まで歩いてきて
私の手を掴む
「もう踊れないって嘘だろ!?」
『…………。』
「嘘だ、姉さんが、…そんな、嘘だ!」
『本当だよ。』
私の声が部屋にこだます

樹が泣きそうな目で私を見つめる

『樹、』
「ッ、なんで、皆、居なくなるんだ…、姉さんも、翼も!」
『樹。』
私は樹の双眼から流れる綺麗な雫を指で拭う

『大丈夫。姉さん、踊れなくなったけど作曲は出来るから。だから泣かないで?』
「約束はどうするんだよ!三人でステージに立つって、約束しただろ…!」
『それは、』

樹はポツリと呟いた
「…姉さんを突き落とした奴、」
『駄目だよ樹。』
「なんで!」
『樹は凄い子なんだから、例え私の為でもそんな事しちゃ駄目だよ。それに翼が悲しむよ…。』
「…ごめん姉さん。」
『うん宜しい。樹、ちょっと屈んで。』
「?うん。」
樹の頭に手を伸ばし撫でた
『よしよし、樹は良い子だね。』
「ね、姉さん!俺はもう子供じゃないから!恥ずかしいから!」






樹said
目の前で俺の頭を撫でる最愛の人

きっと俺が貴方に対して劣情を抱いているなんて思ってない

貴方を姉だと思った事は一度たりともない

姉と呼ぶ訳は貴方が喜ぶから
ただそれだけの理由だ



貴方が俺を弟としてしか見てない事も知ってる
だから俺は触れる事を許される

ごめんね姉さん


俺、姉さんが思ってる程良い子じゃないんだ

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作者名:おこめ | 作成日時:2019年9月3日 21時

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