検索窓
今日:2 hit、昨日:13 hit、合計:84,347 hit

ちず ページ40

「フェリドー、これなに?」



今日も暇な私は無為に時間を消費する。

昼食を終えた午後、執務室でなにやら作業をしているフェリドを横目にしばらく本を読んでいたが、それにも飽きてしまって部屋の中をうろうろ見て回っていた。


執務机の前まで来たところで、机の上に乱雑に積み上がる本の上に広げられている大きな紙を見つけた。

地図のように見える。ところどころに、赤いペンで印がつけられていた。




「ああ、それ。この都市の地図」



「この赤い印は?」



「警備の薄いとこ。家畜を管理するために見直しとけって」





なるほど。たぶんそれ、私が見たらいけないやつだな。

少し前にクローリーが屋敷に来てくれた時に、フェリドが熱心に地図を描いていたのは知っていたが、それはこのためのものだったのだろうか。私には関係ないけど。




「あとさ、気になってたんだけど」



「ん〜?」



「あの紙袋、なに?」




部屋の隅に置いてある、大きめの紙袋を指で示す。

中身がちらりと見えるが、じゃがいも、にんじん、たまねぎなど、この部屋というか、この都市内にはとても似つかわしくない野菜たち。


場違いなそれに目を向けて、フェリドが楽しげに教えてくれる。




「いつも頑張ってる子へのご褒美」



「んー?」



「ふふ、カレーだってさ」





言われてみれば、カレーの材料はあんな感じだった気がする。

フェリドがこっそり屋敷に招いて血を吸っている子供たちの誰かにあげるものらしい。




「へえ。定番だなあ」



「君はカレー、作れる?」



「たぶんね。最近料理してないから分かんないけど」





私の言葉に、「食べてみたいな」と言うフェリドに、「食べれないでしょ」と笑い返す。






…ああ、ダメだ。また気を抜いてしまった。

ここ数年のフェリドは本当に私に対して紳士的で、優しくて、まるで人間のようで、危険なやつだと分かっているのに気を緩めてしまうことが増えた。


実際こうして話すのは楽しい。だから困る。警戒心が持続してくれない。






しっかりしろ、と気を引き締め直したところで、フェリドが立ち上がった。




「どこか行くの?」



「ちょっと散歩〜」





また都市内の見回りに行くらしい。

私はそれを見送って、先ほど飽きて放り投げてしまった本をまた読み直すことにした。




そして、今日もあっという間に時間は過ぎる。

どろぼう→←ぬるまゆ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (46 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
98人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。