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ほんのう ページ31

フェリドの悪ふざけに付き合うのはいつものことだが、今回ばかりは洒落になっていなかった。



名古屋で多忙の身をそのまま京都まで持って行き、血が足りないと言えば「それくらい我慢しなよ」と断られた。



吸血鬼が血への欲求を我慢できないなんてこと、フェリドは充分知っているはずだった。

しかし彼はそれを自分に強要する。
吸血鬼にとって、それは拷問にも等しい。




「はあ、くそ。血が足りない」




喉が渇いて仕方がない。

子供の血でもいいから吸いたかったが、それもフェリドに禁止された。その代わり、




「別に血を禁止するわけじゃないよ。君が吸っていいのはAちゃんの血だけ。簡単だろ?頼めばすぐにでも吸わせてくれるよ」




なんてことを言われた。


Aの血を吸うのは嫌だ。

彼女の首に食らいつく自分を想像すると、とてつもなく悪いことをした気になる。絶対に侵してはいけない領域に踏み込んでしまったような。


だから僕はAに会うことを拒否した。会えば我慢が効かなくなる気がしたから。



しかし、それでも。




「あ〜、無理。そろそろ限界…」




こんな状態では名古屋に帰ることもできない。

数日もすればフェリドが飽きてくれるだろうと考えていたが、甘い考えだった。奴はなにがなんでも僕にAの血を吸わせたいらしい。



吸血鬼の我慢の限界は、突然やってくる。

僕にとってのそれは今だった。






真っ暗な廊下を進んで、目的の部屋へと静かに入る。

部屋の主はまだ起きているようだった。吸血鬼の目には、光源のない部屋でも昼間のように見ることができる。



あちらには僕の姿は見えていないようだ。かけられる声を無視して、無言でベッドに近づく。
血管を血が流れる音に、荒くなる息が抑えられない。




彼女の目の前まで来れば、ぱっとほのかな明かりが灯った。やっと僕の姿を確認した彼女の目が驚きに丸くなる。


おずおずと伸ばされた手を取って、ベッドに縫い付ける。もう、今すぐにでも血を飲みたかった。



けれど彼女の首に牙を突き立てようとすると、体がそれを拒否するのがわかる。血が飲みたい。でも彼女に傷をつけたくない。



ひどく苦しい思いで、ベッドに横たわる彼女を見下ろした。

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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時

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