吸血鬼になった彼との (ページ30)

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まよなかページ30

もう、明日で一週間もクローリーに避けられている。

私は泣きたい気持ちになりながら、もぞもぞとベッドの中に入った。今はもう夜だ。屋敷の中を探し回るには、暗すぎる時間だった。

「ぐす…うう、さみしい。クローリーさま…」

今までクローリーが屋敷に滞在した最高記録は一週間だ。まだ屋敷内にいるようではあるが、さすがにそろそろ帰る時期のはずだ。

本当に、このまま会えずに終わってしまうんだろうか。

もしかしたら、もう京都に来てくれないなんてこともあるかもしれない。

それを思うと、どうしても寝付けなかった。

「ん…？」

カチャ…と、部屋のドアがゆっくりと開けられる音がした。静かに閉まる音も。

こんな時間に、誰が部屋に来るんだろう。フェリドかな？部屋が暗くて、少し先も見通せない。

「はっ…」

「だれ？」

荒い息づかいが聞こえる。電気を点けようと枕元を漁るが、スイッチが見つからない。

だんだん目も慣れてきて、人影がゆっくりベッドに近づいてきているのが分かった。背が高い。男性のようだ。

「ねえ、だれ？私の知り合い？」

「…」

答えない。苦しそうに喘ぎながら、ついに目の前まで来てしまった。

枕元を探っていた手が、スイッチを見つける。暗い部屋にほのかな明かりが灯った。

赤味のある光に照らされて浮かび上がったのは、私の事をずっと避けていたはずの、クローリーだった。

それに心が浮き立ったのも束の間、すぐに様子がおかしい事に気がつく。

クローリーは赤い瞳で、私をじっと見つめている。その目に理性があるように見えなかった。

「クローリー様…？だいじょうぶで…」

「血…っ」

そっと手を伸ばせば、目で追えないくらいの速さでその手を掴まれてしまう。そのまま、ベッドに押しつけられた。

クローリーの目がぎらぎらと光る。

「え…あの」

クローリーの口が開いている。なにかを我慢するように、鋭い牙が震えていた。

いや、なにかなんてわかりきっている。吸血衝動だ。

クローリーは今、理性を失うほどに血が足りていない。

原因は分からないが、苦しむクローリーを見るくらいなら早く血を吸ってほしかった。

けれどクローリーは私の血を吸う事を本能が拒むと言っていた。

今、彼は本能と本能の板挟みになっている。

それを証明するように、ベッドに押しつけた手に力がこもった。