じょうねつてき ページ15
「好き…?」
目の前に、恐ろしく綺麗な男の顔がある。
その口が今、私のことを好きだと言った。
「ありえないよ」
「でも、好きなんだ」
「嘘だよ」
首を振って否定をすれば、鼻の先がつきそうなくらい近づけられた端正な顔が寂しそうに笑う。
なんなの、その顔は。まるで本当に失恋したみたいな顔をして。
「まるで人間みたい」
「吸血鬼さ」
「なら、私のことを好きにはならない」
「頭が固いね。吸血鬼が恋をしたっていいだろう?」
そう言って、フェリドの顔がぐっと近づいた。
性格はともかく、この男は本当に綺麗な顔をしているのだ。
こうして好きだと言われて、こんなに顔を近付けられれば、長生きをして動じなくなった私も、ほんの少しだけ照れてしまう。
「ぅ…」
「…少し顔が赤くなった。視線もずれた。意識してくれてるの?」
「分かってやってるでしょ…」
私の言葉にフェリドは笑って、そっと唇を合わせた。
それは、八百年ぶりのキス。最後にしたのは、吸血鬼になってしまったクローリーとの別れの時だった。
そっと触れ合わさった唇が、すぐに離れる。
性格に似合わぬ、丁寧で優しい口づけ。
「どう?僕のこと、ちょっとは好きになった?」
「ん〜…」
にこにこと私の顔を伺うフェリドには悪いが、これだけで好きになるほど私は簡単な女じゃない。
そもそも、フェリドからの告白自体、本当か怪しい。全然信じられない。絶対なにか企んでいる。
「クローリー様の事が恋しくなった」
「…え、なんで?僕とキスしてクローリー君のこと思い出しちゃったの?」
「うん。というか、たぶん私、あなたにどれだけ言われようとクローリー様以外は好きにならないよ。だから、ごめんね?」
えへ、と笑い返してやれば、フェリドは思惑が外れたような顔をして、「ふぅん」と一つ頷いてから、椅子から離れてくれた。
「な〜んだ、簡単に奪えると思ったのに」
「やっぱり演技じゃん」
「情熱的だったろ?」
まあ確かに。この顔で、あんな風に迫られたら大半の女の子は堕ちてしまいそうだ。
まあ私は堕ちないけど〜と笑いながら、部屋にあったティッシュで口を拭いた。
丁寧に唇を拭く私を見て、フェリドが「え」と笑顔で固まっていたけれど、しーらない。
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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時