吸血鬼になった彼との (ページ14)

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こいページ14

彼女に続いて部屋に入り、静かに扉を閉める。

部屋に男と二人きりという状況で、彼女からは少しも警戒心が見えない。

僕には目もくれず、豪奢な造りの椅子に腰を下ろした。

「なに、ほんとにクローゼットの中調べるの？」

「うん」

ゆったりとした動きで、彼女に近づいていく。

クローゼットは彼女の向こう側にある。このまま進んで、彼女の座る椅子を軽く避ければいい。

彼女はそう解釈したようだが、間違いだ。

今のうちに、持てる限りの全力で、僕から逃げるべきだった。

「フェリド？」

「あは、あはははは」

僕が彼女の前で足を止めれば、やっと何かがおかしい事に気がついたらしい。

僕から距離をとるように椅子を引くが、遅い。彼女が立ち上がる前に、背もたれに両手をついて彼女を閉じ込めてしまう。

これで、彼女はもうなにもできない。簡単だ。悲しいほどに簡単。

「なんのつもり？」

「いやぁ、クローリー君だけずるいなあと思って」

「うん？」

「自分に恋してくれる女の子が同じ時間を生きてくれるなんて、吸血鬼にとったら有り得ない事なんだ。それが、僕には羨ましい」

「…なにが言いたいの？」

本当に分からないという顔で、彼女が首を傾げる。
僕とおそろいの銀髪がさらりと肩を滑り落ちた。それを一房すくって、口づける。

それを見た彼女が、目を見開いて息を飲む。

「君の心が欲しい」

「な…」

「これから先、長い時間を、僕のことを考えながら生きて欲しい。君の恋心のおこぼれを貰いたい」

ぎし、と椅子を軋ませて顔を彼女に近づければ、椅子の上で彼女が後ずさった。

その程度の抵抗しかできないなら、簡単に奪える。

「フェリド、変だよ」

「なにが？」

「吸血鬼は、そんなことに興味はないでしょ」

ああ、そうだ。興味なんてない。
これだけ近くにいても、僕の心は少しも動かない。

でも、憧れはある。

退屈なこの人生で、もしも恋ができたならどれだけ心が癒されるのだろうかと。

彼女はそれを知っている。だからそれを僕にも向けてほしい。何百年も続く恋を、一番近くで見せてほしい。

彼女に対して興味はない。ただ、都合が良かっただけ。

「そんなことないよ」

だから僕は嘘をつく。

「僕は、君のことが好きだからねぇ」

心はまったく動かなくても、愛の言葉を囁いた。