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きゅうけつき ページ13

八百年前に偶然見つけた、不死の体を持つ少女。

正確にいえば不死ではない。吸血鬼とは違って、殺せば死ぬのだ。生首のまま生きていたりはしない。

ちょっとした違いではあるが、吸血鬼とはまた違った意味での、死ねない体。



クローリー・ユースフォードを吸血鬼にする際に、執着の矛先として彼女を利用したのだが、それから八百年、クローリーは一度も彼女に会いに行かなかったらしい。


まあ、そうするように仕向けたのは僕なのだが。





そんな彼女が、どんな流れでかは知らないが、家畜としてこの京都の地下都市サングィネムに訪れてしまった。



正直驚いた。


吸血鬼ならまだ分かる。吸血鬼は、生前の執着を引きずる傾向にあるから、何百年が経っても一人の人間を忘れないなんて事はよくあることだ。


けれど、彼女は人間のはずだ。


人間が、何百年も生きて、色々な物事に心を動かされながら、それでも一人の人間を思い続けている。



これは異常な事だった。人間の心を持っているのに、死に慣れるなんてこともあり得ない。彼女は異常者だ。






「…ま、だからといってそんな事どうでもいいけど」



「なにか言った?」






一緒に屋敷の長い廊下を歩きながら、彼女が振り返る。それに首を振れば、興味なさげにまた前を向いてしまった。




彼女に対して興味はない。八百年前のあの日に、彼女の使いどころは終わった。

だから、今こうして面倒を見るのはただの暇つぶしで、飽きたらすぐにでも殺せる。


きっと首を切って、体とくっつけないまま放置すれば生き返らないはずだ。それにも少し興味があった。





「おっと、君の部屋に着いたね」



「うん、着いたね。…で、入ってくるんだ」



「クローゼットの中、検分しなきゃ」





僕がそう言えば、うへえと見るからに嫌そうな顔になる。

本当は彼女がどんな服を着たってどうでもいい。本当に、全てに対して関心が持てない。




それが、吸血鬼だ。






長い年月を、すべてに無関心のまま過ごす絶望。


隣にいる彼女も長く生きたはずだが、食事もできるし睡眠も必要、涙を流して恋だってできる。




それはとても、羨ましかった。




そして、そんな感情豊かな人間が、吸血鬼と同じ時間を生きてくれる。

そんな伴侶を持てるクローリー・ユースフォードに、ほんの少し嫉妬した。




だから僕は。


彼女に対してなんの興味もないけれど。





…彼女を奪ってやろうと考えた。

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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時

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