やくそく ページ35
食事を食べ終わってすぐに、クローリーは名古屋に帰ってしまった。
もともとこんなに長期間滞在する予定ではなかったので、すぐにでも帰らなければいけないらしい。
残念な思いでクローリーの事を見送れば、別れ際、念を押すように「これからはできるだけ死なないように気をつけること」と注意された。
それに頷いて、「約束だからね」と言われてしまえば従うしかない。八百年で染み付いた癖を治すのは大変そうだが、頑張ろう。
そう決意を新たに、まずはこの傷が自然に完治するまでは死なないようにと目標を立てた矢先の事だった。
「や〜、Aちゃん。クローリー君も帰ったことだし、久しぶりに君の血を吸わせてもらってもいいかな?」
変態が現れた。
クローリーを門まで見送った帰りの廊下で、ばったりと出会ってしまった。
「…拒否権は」
「ないに決まってるでしょ。ほらほら、衣食住保証してあげてる対価だと思って!」
「あのね、フェリド。悪いけど死ぬまでは吸わせてあげられないよ。クローリー様と約束したから」
「ほう、クローリー君と?なるほどねぇ」
フェリドの目が面白そうに細められる。
ああ、言わない方が良かったかな。でも言っとかないと絶対最後まで吸われるからなあ…。
「あ、首に傷があるね。ふむ。クローリー君は殺すまで飲まなかったのか。よく我慢できたなぁ」
「…」
「OK、事情はわかった。残念だけど、今回は僕も我慢することにしよう」
「本当に?」
「うん。寸止めでやめてあげる」
ニコニコと笑うフェリドが、私の首に手をかける。
あー、でもこれ、昨日吸われたばっかりだし、まだちょっとふらふらするし、加減難しそうー…。
「んっ」
ぼーっとそんな事を考えていれば、首にフェリドの牙が突き刺さった。
本当に気をつけてくれているようで、いつもより飲むペースが遅い。慎重に吸ってくれているのが分かる。
…あ、でもやっぱりダメだ。血が少なくて、これ以上はむり…
「は、ぁ…フェリド、も…っ」
「…ぷは、えー、もう?全然吸ってないよ〜」
慌ててフェリドの服を引っ張れば、すぐにやめてくれた。なんだか今日は聞き分けがいい。
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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時