だいじなこと ページ21
フェリドのすることにいちいち腹を立てていても仕方がない。
そういう奴なのだ。諦めよう。とっても腹立たしくはあるけど。いや、かなり腹立たしい。
「一度くらい首をはねたいな…」
「なんか今物騒な言葉が聞こえたよ〜」
こうして人が怒っている時に口を挟んでくるのも、なんなんだろう。いや、怒ってもきりがない。落ち着け、落ち着け…。
「ああ…クローリー様がいる…心が洗われる」
「はは。そういうとこは変わらないんだ」
フェリドから視線を外せば、そこにいるのはクローリーだ。本物。八百年ぶりの好きな人。
少し雰囲気が変わったと言っても、クローリーはクローリー。できるなら今すぐ抱きつきたい。離れていた分、ずっと一緒にいたい。
だが、それをするには一つ気になることがあった。
聞くべきか少し迷ったが、ここで聞かないと後悔する。
私は軽く息を整えてから、クローリーに向き直った。
「あの、クローリー様。聞きたいことがあります」
「ん〜?」
「あのですね、その、ぅ…、その、胸元を、開けすぎではないでしょうか…っ!」
言った。言ってしまった。
でも、これはとても重要なことだ。ひと目見た時から思っていた。胸元をはだけすぎだ、と。
記憶の中にあるクローリーは、どちらかというとガードが固い方でほとんど肌は見せていなかったはずだ。
なのに、今目の前にいるこの人…ちがう。この吸血鬼はどうだろう。吸血鬼の貴族衣装がとてもよく似合っている。それはいい。
よく鍛えられた体が、首から胸にかけて思いきり見えてしまっている。目のやり場にとても困ってしまうのだ。
こんな格好をされていては、抱きつくこともできない。
「…え〜、そこ気になる?」
「気になります。その、刺激が強いです。身長差的に…目の前に、素肌が見えるので。緊張します」
きっと私の顔は今赤い。こんなに心臓がドキドキするのは何年ぶりだろう。
クローリーに会っただけで、仙人並みに生きたから、もうちょっとやそっとでは動じないと調子に乗っていた私の心は、若さを取り戻してしまったらしい。
できるだけクローリーの胸を視界に入れないように俯いている私の背後で、フェリドが楽しそうに、クローリーにジェスチャーでなにかを伝えていたのには気がつけなかった。
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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時