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さいかい2 ページ20

誰かが部屋に入ってきた。

その時聞こえた声が、今、私の胸をどうしようもなく揺さぶった。


聖書を目からどけるが、フェリドが邪魔で相手の姿が見えない。


誰、今入ってきたのは。今の声は、誰?





「やあ、来たんだ」



「君が来いって言ったんでしょ。もしかして食事中だった?」



「違うよ。あ、そうだ。せっかくだし飲んでいく?」





フェリドの体がスッと目の前からどいた。

扉の前に、大柄な吸血鬼の男が立っている。服装からして、貴族だ。


赤髪の、吸血鬼…。





「あ…」




体を起こしてその姿をしっかりと見れば、体が雷に打たれたような衝撃に固まった。

その吸血鬼も、私の顔を見て動きを止めた。じっと見つめられている。私もそれを見つめ返す。




「く、クロ…」


「A…?」




声が被った。
 
確信する。姿は少し変わってしまっているけれど、彼は私が八百年間探し続けていた相手に他ならない。
 



クローリー・ユースフォード、その人だった。





「フェリド君」


「ん〜?」


「趣味が悪いよ」


「あはぁ、感動の再会だろ?」





クローリーが、フェリドを睨んでそう言う。

本当に、クローリーなんだ。フェリドと話すその光景は、十三世紀のヨーロッパで見た光景を彷彿とさせる。



私はソファから降りて、ゆっくりとクローリーのもとまで歩いた。相変わらずカッコいい。




「あの、あの、クローリー様」



「ああ、えっと…」



「私のこと、覚えてくれていますか?」




目の前まで来て、そう問うてみる。

さっき名前を呼んでくれたから、すっかり忘れてしまったということはないだろうけど、不安だった。

再会するには、時間が経ちすぎてしまった。




私がクローリーの顔をじっと見つめれば、クローリーも少し目を丸くしてこちらを見つめ返してくれる。




「覚えているよ」



「本当に…?」



「うん。また会えるとは思わなかった」





そう言って笑うクローリーの表情は、記憶にあるものより淡白で、人間味が薄れてしまっているように感じる。


けれど、こうして話せることが嬉しくてたまらない。




「あんな風に一方的に別れちゃったから、私、ずっと探してたんですよ」



「そうか。フェリド君には、君は死んだと聞かされていたけど」



「え」





驚いてフェリドの方を見れば、にこにこと楽しそうにこちらを見ていた。

またお前か。

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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時

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